工学部長あいさつ Greeting from the Dean

工学部長からのメッセージ

工学部長 瀬戸口 剛

■ カタチにする工学

工学とは,優れた理論や技術を開発し,それらを実現させる(カタチにする)学問です。 “engineering” はラテン語の “ingenium”(優れた発明品) が語源で,カタチにまですることが工学の使命とも言えます。カタチにする過程では,自分の専門領域に留まらずに様々な知識を追求し,多くの学問領域を修得する必要があります。

新たな技術を開発し実現するには,異分野の専門家と交流し触発し合うことが必要で,自分の視野を大きく広げてくれます。工学の一番の面白さは,理論や技術をカタチにする過程での様々な人との出会いがあり,常に新しい発見があることです。

■ 北海道大学工学部-フィールドを活かした工学教育

北海道大学工学部は1924年に本学3番目の学部として創設され,今年で95年を迎えます。北海道大学は,その源である1876年の「札幌農学校」の開校以来,140年を超える歴史の中で,4つの基本理念「フロンティア精神」「国際性の涵養」「全人教育」「実学の重視」をもとに,多くの優れた人材を輩出してきました。 工学部は本学の建学の精神に基づき,「人類の生活をより快適に,より豊かにすることを使命として取り組まれるべき学問としての工学を通じて社会に貢献すること」を基本理念としています。 工学部は,応用理工系学科,情報エレクトロニクス学科,機械知能工学科,環境社会工学科の4学科15コースで構成されています。いずれも優れた工学理論や工学技術をカタチにするための実学を重視し,北海道をはじめとするフィールドを活かした教育や研究が特徴で,世界的に活躍できるエンジニアを育成しています。

最近では,Society5.0およびその先の時代に対応するために,AIやITを使いこなせる理工系人材を求める動きが,業種を超えて激しくなっています。 これに応えるべく,工学教育は従来のように特定の専門領域に留まるのではなく,多様な学問領域を広く柔軟に修得できる仕組みに変わりつつあります。 本工学部でも15コースを横断的に学修できるカリキュラムが整備されています。同時に,先進的な工学技術者や工学研究者になるためには,自身の専門領域を深く学ぶ必要もあります。 深く学修することにより,学問の広がりが見えてくるのです。そのためには,学部4年間の学修期間では十分とは言えず,学部と大学院修士課程を合せた6年間一貫教育,さらには大学院博士課程まで含めた9年間一貫教育も視野に入れる必要があります。 本工学部から大学院修士課程への進学率は,いまや8割以上にもおよび,すでに多くの学生が高いレベルの工学教育を学修しています。

■ カタチにするエンジニア

新たな理論や技術をカタチにする工学の究極の目的は,人々の幸せを創り出すことです。新しい製品を開発したり,新しい施設を建設したりして,それを使う人々の笑顔を見るときほど自分の職業が豊かで楽しいと思えることは無いでしょう。

札幌農学校の第二代教頭を務められたウィリアム・ホィーラー先生は,こう言われています。“To live in Truth toward all mankind with helping hand, kind heart , just mind”「全ての人々に分け隔てなく支援の手,親切な心,正しい精神をもって接し『真理』に生きなさい。」* ホィーラー先生は,札幌時計台や北大のモデルバーンを設計された第一線の工学者でした。先生が何よりも伝えたかったことは,工学技術者として人の幸せのために最先端の技術を活用することでした。さらに,ホィーラー先生から薫陶を受け,札幌農学校第2期卒業生で,わが国の工学,とくに土木工学の発展に大きく寄与された広井勇先生は,「工学者たるものは自分の真の実力を持って,世の中の有象無象に惑わされず,文明の基礎付けに努力していれば好いものだ。だから又工学者たるものは達観が利く者でなければならん。」** と述べられています。 確固たる科学的な根拠を基づいて技術開発を行うとともに,社会的価値観や人々が求めるものを見抜く力を備える大切さを説いています。

北海道大学工学部には,工学者としての素晴らしいマインドが脈々と息づいています。みなさんがこの工学部で生涯の師と友人に出逢い,多くの有益な学問を修得し,人々のシアワセをカタチにして社会に貢献するエンジニアになることを,切に願っています。

出典:* 高崎哲郎「お雇いアメリカ人青年教師,ウィリアム・ホィーラー」(鹿島出版会)
** 高崎哲郎「評伝 山に向かいて目を挙ぐ―工学博士・広井勇の生涯」(鹿島出版会)
(2019年4月 星影冴かに光れる北の大地にて)

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