私の属する環境人間工学研究室では、全体ゼミの日に全員の研究テーマに類似する論文や教科書の紹介を一人ずつ行い、調査手法や結果、考察の導き方について議論します。また、別の日には、研究テーマごとに集まり、互いに紹介し合う論文から活用できる点や改善すべき点、教訓となる考察について、指導教員や先輩も含め活発なディスカッションを行います。更に、自身の研究を毎日進めるとともに、新渡戸カレッジのプログラムに参加したり、教職科目を学んだりしています。
私たちは一日のほとんどを屋内で生活しており、室内の光環境に依存しています。ヒトの脳には生理的機能や睡眠−覚醒などの行動の日内変動を調整する時計が存在しますが、地球の自転に伴う明暗周期に同調します。しかし、夜に浴びる光は体内時計を攪乱し、体内時計と社会的時計の間にズレが生じます。そのため、現代人において睡眠問題、社会的時差ボケ、生活習慣病などの健康リスクが増加しつつあると考えられています。
私の研究では、夜型化した現代人の睡眠−覚醒リズムの位相を前進させるための室内環境の提案に向けた調査を行っています。室内の光環境が体内時計に与える影響だけでなく、心理的要因にも着目しています。室内環境を考えるにあたって、ヒトの生理的・心理的快適性を優先し、「環境」と「健康」に配慮したライフスタイルの構築を目指したいと思います。
「環境生理学」で光環境要因が人間の生理反応や健康に及ぼす影響について学んだこと、「人間環境計画学」で人間環境に関する基礎知識、屋内外環境評価指標及び指標の算出方法を習得したことが特に活かされています。また、「熱工学」で人間と周囲環境に関する熱の問題を扱い、「応用数学」で自然現象を数学的に記述し、その解法と応用について修得したことも大きく役立ちました。更に、「計画数理学」で環境計画学の基礎概念、環境問題解決のためのシステムズアプローチと意思決定のための統計的手法を学んだことが、環境側の知見と人体側の知見の有機的統合の参考となりました。
私の生まれ育った西アフリカのガーナでは、マラリアやHIVエイズ等の感染症の蔓延、木材輸出のための森林伐採、車両排気ガスによる大気汚染等の環境問題が年々深刻化しています。また、金採掘による水質汚濁も大きな問題となっており、これには水俣病などの公害を経験した日本の知見を活かし、ガーナなどの開発途上国の環境問題を食い止めることができるのではないかと感じました。
このように環境問題は一国のみでは解決できず、国境を超えた連携を通して地球規模的課題の解決に取り組みたいという想いから、「人間の健康」と「地球環境」を調和させる手法を学ぶ「環境工学コース」を志望しました。
地球規模的課題は幅広い分野の問題が相互に関連しており、その解決には人間のみならず環境や生態系への配慮が必要です。環境工学コースでは、環境問題の主体となる水・エネルギー・廃棄物・大気などの環境因子について学びながら、理系のみならず、文系の知識も幅広く活用し、環境問題に関わる領域を横断的かつ体系的に学べることが魅力です。
学部での研究をさらに深めることによって、自分の幼少からの目標であった、世界の抱える課題を解決するための自己の課題発見力、計画能力、課題解決力を高め、自己の学びを将来世界に還元できるようなスキルを身につけるために大学院進学を決意しました。
将来的に自己の基礎研究の結果を研究成果に留めず、人類の公衆衛生の向上に活かしたいという目標を実現するため、大学院修士課程修了後は、博士課程に進みたいと考えています。更に博士課程修了後は、国際機関にて世界の課題解決に関わるような仕事に就きたいと思います。
「人間」と「環境」の調和は持続可能な社会の礎であり、地球上の全ての「命」は、良好な自然環境があるからこそ成り立ち、紡がれてきました。
しかし、近年の人間活動の影響により、地球温暖化は加速し、環境問題の解決が急務となっています。そのような中で、環境工学コースでは、この地球規模の課題に対して、学生である私たちでも、どんな立場にある人でも、必ずできることがあるということを様々な角度から教えてくれます。
今在る全ての命を衛り、ベストな次世代に繋げるために、本コースで是非一緒に取り組んでみませんか?
本コースでは、「衛生工学・環境工学教育基金」を立ち上げました。
新入試制度(フロンティア入試タイプII)により環境工学コースに入学した学生への奨学金給付、および学部教育用設備の更新や博士後期課程に在籍する学生への経済的支援などに有効に活用させていただきます。
北島正章准教授(水質変換工学研究室)が、新型コロナウイルスの下水調査に関して、複数のテレビ番組、新聞等に登場しています。
石井一英教授(循環共生システム研究室)が、株式会社クボタ様作成の『2050年未来会議「食料・水・環境」を本気で考える』(Newspicksのネット番組)に出演しました。
北島正章准教授(水質変換工学研究室)らの研究グループが、下水中の新型コロナウイルス濃度が医療機関における感染者数の指標になることを証明し、本研究論文についてプレスリリースを行いました。
石井一英教授(循環共生システム研究室)が、自然エネルギー財団のフォーラム「自然エネルギーと北海道・日本の未来:G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合に向けて」に出演しました。