植物⇔工学 Engineering of Biomass

「バイオマス」という言葉を聞いたことがありますか?

バイオマスとは、植物や微生物に代表される生物由来の資源です。
これらバイオマス資源に含まれる有機炭素は、
元をたどれば植物の成長過程で光合成によって取り込んだ大気中の二酸化炭素です。
ということは、バイオマスを廃棄・焼却しても地球上の二酸化炭素の総量は増加せず、
さらに排出された二酸化炭素は、太陽光による植物の成長に再び利用されるという
地球環境にやさしい特徴を備えています。
つまり、再生不可能な石油資源由来の物質を再生可能なバイオマスに置き換えることで、
国連が提唱する「持続可能な社会(sustainable society)」の実現が期待できます。
そのため、近年では世界的にバイオマスを原料とした
機能材料やエネルギーの創成が盛んに研究されています。
今回の特集では、北海道大学大学院工学研究院で行われている
代表的なバイオマスの研究を紹介します。

TALK LOUNGE

〉〉〉 バイオマス資源はカーボンニュートラル

 石油や石炭を採掘し、燃焼してエネルギーを得る、または材料として利用後、廃棄・焼却すると、地中に埋まっていた炭素を二酸化炭素として放出するため、大気中の二酸化炭素量が増加してしまいます。他方、バイオマス中に含まれる炭素は、上で説明したとおり、燃焼・焼却しても地球上の二酸化炭素の総量は変化しません。この性質を「カーボンニュートラル」と呼びます。

〉〉〉未来のためにゴミを資源に変える

 国の温室効果ガスの削減目標を取り決めた京都議定書でも、バイオマス資源に由来する二酸化炭素は、温室効果ガスの排出量に入りません。バイオマスの中でも「ゴミ」に由来する廃棄物系バイオマスは、いま注目の研究分野です。家庭の生ゴミや産業廃棄物、植物の非食用部を利用するなど、これまで捨てていたものを利用する画期的な技術です。

<コーディネーター 山本 拓矢(工学研究院応用化学部門准教授)>

ゴミの正体は宝物?キーワードはカーボンニュートラル