特集05

新しいライフスタイルのために木質バイオマスの利用を!
Wood biomass for our new life style

地域の、地域による、地域のための自然エネルギーを目指して 環境創生工学部門 大気環境保全工学研究室 助教 山形 定

[PROFILE]
○研究分野/自然エネルギー利用、大気環境保全
○研究テーマ/木質バイオマスの利用技術
○研究室ホームページ/http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/atmenv/pages/index.html

Sadamu Yamagata : Assistant Professor
Laboratory of Atmospheric Environment Engineering
Division of Environmental Engineering
○Research field : Usage of natural energy, Conservation of atmospheric environment
○Research theme : Technologies for wood biomass
○Laboratory HP : http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/atmenv/pages/index.html

地球上の物質循環から見えてくる
最も頼りにしたいエネルギー

太陽光を使って光合成を行う植物などは、地球上の他の生物のほとんど全てが生きていくために不可欠な有機物を作っています。この有機物は、動物や微生物によって利用された後、二酸化炭素(CO2)・水などになって再び植物が利用できる形になります。このような私たちが生きていくために必要な「もの」の循環は食料だけでなく、植物がつくるバイオマス燃料でも同様です。最も身近なバイオマス燃料は、薪などの環境負荷が少ない木質バイオマスです。

化石燃料を使うと、大昔に地中に固定されたCO2を大気中に放出することになり、核燃料(原子力発電)では、発生する高レベル放射性廃棄物を万年単位という長期間にわたって管理しなければなりません。このようなことを考えると、私たちが頼りにするべきエネルギー源は、日々私たちに降り注ぐ太陽の光を中心とした自然エネルギー、再生可能エネルギーと呼ばれるものを選ぶのが賢いやり方と言えるでしょう。

捨てる部分から作るペレット
電気不要のロケットストーブも

木質バイオマスの活用例の一つにペレット燃料があります。一般には木質由来のペレットが知られていますが、実は木以外のバイオマスからもペレットを作ることができ、農作物の葉・茎などの食べない部分やコーヒー滓など捨てているものの燃料化を試みています(図1)。

ペレット作りを進める一方で、我々は燃焼機器の開発にも取り組んでいます。今、注目しているのは電気も煙突もいらない「ロケットストーブ」です。薪ストーブの煙突の役割を、室内に設置した「ヒートライザー」が果たしており、薪などの燃料を100%燃焼させて作った熱を100%利用する可能性を秘めた面白い燃焼装置です(図2)。将来的には、北海道の製造業を元気にする北海道発の燃焼装置へと成長できるよう日々改良を続けています。

バイオマス燃料は地域に多くの仕事を生み出す点でも関心が集まっており、私たちは地域への経済効果の評価も進めています。化石燃料・核燃料を卒業し、新しいライフスタイルを実現するために、「地域の、地域による、地域のための自然エネルギー利用」をモットーに、NPO法人の活動なども含めて取り組んでいます。

図1 図1 北海道内の農作物残渣から作られたペレット Figure1:Biomass pellets produced from agricultural wastes in Hokkaido. 図2 図2 ロケットストーブの原理:燃料の薪から揮発した有機ガスは断熱されたヒートライザー内で完全燃焼されて高温の燃焼ガスとなる。その後、燃焼ガスの熱が利用される。 Figure2:Principle of a rocket stove:Organic gas evaporated from fuel logs is combusted thoroughly in the insulated heat-riser to give high temperature gas which is used down flow.
technical term
ペレット 木を粉砕して直径6mm程度、長さ1~2cmに固めた燃料。
家庭用ストーブなどで使われている。