特集02

超高性能な望遠鏡を目指して
Toward ultrahigh performance telescope

恒星とは?第二の地球探しとは?
未知なる宇宙の不思議を追いかけて 応用物理学部門 フォトニクス研究室 特任教授 馬場 直志 (右) 助教 村上 尚史 (左)

[PROFILE]
○研究分野/天文光学
○研究テーマ/高分解能天体イメージング、太陽系外惑星の直接検出装置開発
○研究室ホームページ
 http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/photonic/index-j.html

Naoshi Baba : Specially Appointed Professor
Naoshi Murakami: Assistant Professor
Laboratory of Photonics Engineering
Division of Applied Physics
○Research field : Astrophotonics
○Research theme : Astronomical high-resolution imaging,Instrumentation for direct detection of exoplanets
○Laboratory HP :
 http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/photonic/index-j.html

太陽と同じように
恒星を観測したい!

 天体を望遠鏡で観測する場合、口径の大きな望遠鏡が有用です。大きな口径の望遠鏡は集光力が大きく、遠くの暗い天体を観測できますし、分解能が良いため天体を詳しく調べることができます。ハワイ島にある我が国のすばる望遠鏡は8mの口径を持っています。口径9m以上となると、直径1~2mサイズの鏡をモザイク状に多数枚配置して有効口径を10mとした望遠鏡があります。さらには、米国・日本などが有効口径30mの望遠鏡TMT(Thirty Meter Telescope)を共同開発しており、欧州では有効口径39mのELT(Extremely Large Telescope)のプロジェクトが進められています。
 しかし、このような超大型望遠鏡をもってしても恒星ですら広がった天体として撮像することはほとんど出来ません。これは口径で決まる分解能が不十分なためです。我々から最も近い恒星は太陽で、その表面には図1のように黒点や粒状斑が観測されています。宇宙にある多くの恒星の表面は一体どのようになっているでしょうか?

図1
図1 太陽表面の黒点と粒状斑 Figure1:Sunspot and granules on solar surface.

第二の地球を詳細に観測する
ハイパー望遠鏡への挑戦

 現代の天文学における重要課題の一つが第二の地球探しです。太陽以外の恒星の周りに地球と同じような惑星を見つけることです。もし地球と同じような惑星であれば、我々と同様な知的生命体(宇宙人)が存在しているかも知れません。私達の研究室では、地球型惑星を直接検出する装置の開発を行っていますが、このような装置をTMTに組み込んで観測しても、太陽系外惑星を点としてしか検出できません。惑星は恒星よりさらに小さいためです。
 超分解能を達成するには、単体の望遠鏡ではなく、図2のように複数台の望遠鏡を広い範囲(km以上)にわたって配置し、有効口径を超巨大とするハイパー望遠鏡が必要となります。当研究室では、このハイパー望遠鏡について検討を進めています。第二の地球を点として検出するのではなく、表面構造を識別できるようにイメージングする方法を開発するのが、我々の研究の目的です。

図2
図2 ハイパー望遠鏡の概念図 Figure2:Conceptual drawing of a hypertelescope.

technical term
TMT(Thirty Meter Telescope) ハワイ島マウナケア山に2014年から建設を開始し、2021年度完成予定の世界最大口径の光赤外望遠鏡。