自然に学ぶ材料と環境修復法の開発
Development of nature-guided materials and environmental remediation technology
[PROFILE]
○研究分野/環境鉱物学、地球化学、廃棄物処分工学
○研究テーマ/ナチュラルアナログ、鉱物の変質・溶解・沈殿の速度論、
有害元素の吸着と地球化学モデリング
○研究室ホームページ
http://geology5-er.eng.hokudai.ac.jp/RG/LoEG/index.html
Tsutomu Sato : Professor
Laboratory of Environmental Geology Division of Sustainable Resources Engineering
○Research field: Environmental mineralogy, Geochemistry, Waste disposal engineering
○Research theme: Natural analogue, Alteration, dissolution, precipitation kinetics of minerals,
Adsorption of hazardus elements on mineral surface and geochemical modeling
○Laboratory HP:
http://geology5-er.eng.hokudai.ac.jp/RG/LoEG/index_e.html
学生と国内外のフィールドで
さまざまなレッスンを重ねる
原子力発電所や病院のように、放射性物質を扱う所からは放射性廃棄物が発生します。放射性廃棄物は非常に危険なものなので、土や地層中に処分されることが予定されており、放射性物質を漏らさないように人工バリア材として粘土が使用されます。この粘土のバリア性能を評価するために、世界中のウラン鉱山や粘土鉱山に出かけ、処分場と似ている環境で粘土のバリア性能を調べていました。このような研究はナチュラルアナログ(自然の類似現象)研究と呼ばれています。ナチュラルアナログ研究を重ねるにつれて、自然が汚染を浄化し、有害物質を漏らさないようにしている事例を数多く見つけました。
このように、さまざまな有害物質と直面する社会で持続可能な発展を目指すには、「自然に学ぶ材料や環境修復法の開発」のためのレッスンが必要だと痛感しました。図1は、鉱山から河川に漏れたヒ素を自然浄化していた「シュベルトマナイト」という鉱物です。シュベルトマナイトは、ヒ素を選択的に吸着して構造中に格納すると、それ自身も安定化される鉱物であることが明らかとなりました。したがって、ヒ素を吸着した後は安全に廃棄できるのです。我々は、その後、シュベルトマナイトを環境修復材料として商品化しました。ヒ素吸着材として高性能、しかも安価に生産できるので、地下水のヒ素汚染のために数多くの方が亡くなっているバングラデシュの井戸水浄化にも成功しました(図2)。
自然に学べば岩石と水から
水素やメタンもできる!
放射性廃棄物の処分場では大量のコンクリートが使用されるので、処分場周辺が高アルカリ化することが予想されています。そのため、我々はオマーンにある高アルカリ温泉(なんとpH12の温泉!)の調査を行っています。高アルカリ環境でも有害元素を閉じ込める技術を自然から学ぶために始めたプロジェクトです。実は、その高アルカリ温泉では水素やメタンがバブリングしています。高アルカリ温泉はある岩石と水の反応からできたものですが、その反応に伴って水素やメタンも生成しているのです。これに学べば、岩石と水から水素やメタンが作り出せるのではないかと考えています。自然に学び、環境問題だけでなくエネルギー問題も解決する地球工学技術を新たに創成していきたいと考えています。
人工バリア | 埋設された廃棄物から生活環境への放射性核種の漏出の防止及び低減を期待して設けられる人工構築物。 |
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自然に学ぶ材料と
環境修復法の開発
環境循環システム部門
環境地質学研究室
教授 佐藤 努 - 環境を優しく守る
環境浄化触媒
有機プロセス工学部門
化学反応工学研究室
准教授 下川部 雅英 - 触媒反応によるバイオマス資源からの有用化学物質合成
有機プロセス工学部門
化学システム工学研究室
准教授 多湖 輝興
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微粒子を用いた
浄水処理技術の開発
環境創生工学部門
環境リスク工学研究室
教授 松井 佳彦 - 環境負荷低減型の
有機廃棄物リサイクルプロセス
環境循環システム部門
資源化学研究室
准教授 福嶋 正巳