卒業生コラム
「まてりある」開発の基本姿勢株式会社三菱化学 |
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[PROFILE]
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「えんじにありんぐ(工学)」って?
理系は数学、物理、化学、生物などが得意、もしくは国語、英語、社会が苦手という人が多いと思います。そんな理系学問のひとつに工学がありますが、工学って一体なんなのでしょうか?
工学と聞くと人間工学や金融工学なども想像され、分かりづらくややこしい感じがしますが、私は、授業や研究などを通じて工業的な「ものづくり」の技術に近いことを体得することかなと考えています。例えば、新製品を開発するのに必要な基礎知識のインプット、製品一歩手前の試作品を効率よく製造するための実験スキルなど。基礎的なことですが非常に重要だったと回想することばかりです。工学部の授業や研究においては、ひとつひとつに工業的な意味があるため、「なぜ、この授業・研究?」を考えることが後で大変役立ちます。
「材料科学」ってなに?
工業が幅広くものづくりを展開するのに対応して、工学も非常に広い学問領域をカバーします。私の専攻した材料科学は「まてりある」(材料)を製造し、形づくり(加工)するテクノロジーで、製品開発の機会が多いため技術的に大変重要で、科学的に大変興味深い分野です。「まてりある」と一言でいうと分かりにくいかもしれませんが、パソコン、携帯、クルマなど電気製品や乗り物に限らず身の回りのほとんどのものは形づくられており、使用されている材質が「まてりある」になります。
製品開発の例をあげると、「もっと薄くてコンパクトなパソコン・携帯電話が欲しい」、「軽くて燃費のいいクルマに乗りたい」などがあります。それを実現する手段として、ガラス、鉄などの既存の「まてりある」から、軽い薄いプラスティックに変更することが考えられますが、材料科学はそんな要求に対応するために必要な知識です。例えば、プラスティックは、柔らかい、弱い、熱で背伸びをするなどの問題があり、このプラスティックからどうやってガラス、鉄やアルミ並の強さをだすか、科学的な限界に挑戦しながら製品開発を行います。
企業研究員の心構え
ほとんどの大学の研究は基礎研究であり、最終成果が論文発表であることが多いため、製品出口をイメージしにくいと思います。しかし、基礎研究でベース知識を身につけながら、研究の工学的なインパクトを常に意識することが重要です。会社では営業生産によって利益を生み出すことが成果ですから、将来どんな製品がどの分野でどのくらい売れるのかを常に意識して商品開発を行います。現在の目標は、既知の「まてりある」限界を超える製品を開発すること。そして将来収益をもたらすべく研究開発に従事していきたいと考えています。利益をもたらすためには、ものづくり以上に特許戦略などの仕組みづくりも重要です。製品の特性や製造方法などのものづくりに囚われることなく、収益を生み出すビジネスモデルを提案できる研究員を目指しています。その傍ら、昼休みには入社後始めたラグビーを製薬会社の元北大ラグビー部キャプテンと熱く練習しています。