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最もエコなパワーソース、それはディーゼルエンジン
The most ecological power source, diesel engines

小川教授

現実に即した"適材適車"を叶えるために、
エンジンシステムの進化で社会に貢献したい。

エネルギー環境システム部門
応用熱工学研究室
教授

小川 英之
[PROFILE]
◎研究分野/熱工学、エンジンシステム工学
◎研究テーマ/エンジンの燃焼
◎研究室ホームページ/http://mech-me.eng.hokudai.ac.jp/~netsu2/
Hideyuki Ogawa:Professor

Laboratory of Applied Thermal Engineering
Division of Energy and Environmental Systems

◎Research field:Thermal Engineering, Engine System
◎Research theme:Combustion in Internal Combustion Engines
◎Laboratory HP:http://mech-me.eng.hokudai.ac.jp/~netsu2/

比較して見えてくる
ディーゼルエンジンの有用性

 トラックなどの大型自動車、ブルドーザーなどの建設機械、トラクターなどの農業機械、漁船や石油タンカーなどの船舶がディーゼルエンジンで動いていることをご存知でしょうか? ディーゼルエンジンが使われる理由は簡単で、熱効率が高いため燃料費を節約できるからです。例えば美味しいご飯や魚が今の値段で食べられるのはディーゼルエンジンのおかげなのです。日本では少数ですが乗用車にもディーゼルエンジンが使われており、環境意識の高いヨーロッパでは新車の過半数がディーゼル車になっています。

図1 各種乗用車用動力源の項目別評価
図1 各種乗用車用動力源の項目別評価
Figure 1:Grades in power sources for a passenger car

 図1は各種乗用車を項目別に評価したものです。赤い線が外側になるほど優れていて、逆にこれが一番小さい六角形よりも内側に入ると実用的に受け入れられないことを意味します。燃料電池自動車や電気自動車は特殊な用途を除き初期コストなどが実用レベルにありません。一方、ガソリンハイブリッド車は初期コストが実用レベルに達し、急速に普及が進もうとしています。それに対してディーゼル車はスペース有効性でガソリンハイブリッド車よりも有利であり、スペースが重視されるミニバンなどではディーゼル車が有利です。

課題だった排気対策も
最新技術でスス濃度が激減

 図1でもわかるように、ディーゼル車の弱点は排気対策が難しく、そのため初期コストがガソリン車に比べてかなり高いことが挙げられます。しかし、最新技術の導入により問題は解決しつつあります。図2は、ディーゼルエンジン内の燃焼過程を撮影した連続画像です。ピストンの一部を石英ガラスで作った特殊なエンジンと高速度カメラを用いました。燃料噴射圧力が40 MPa (上段) から150 MPa (下段) に上昇することにより燃料噴霧のスピードが速くなって空気との混合が改善されています。そのため、スス濃度に対応する火炎輝度が低下し、燃焼終盤には青いレーザー光が透過していることからススが消滅していることがわかります。このようにディーゼルエンジンの燃焼は最新技術の導入で大きく進化しています。

図2 高圧燃料噴射で進化するディーゼル燃焼
図2 高圧燃料噴射で進化するディーゼル燃焼
Figure 2 : Advancing diesel combustion with high pressure injection.

technical term
ディーゼル
エンジン
シリンダ(燃焼室)内に空気のみを吸入してピストンによる断熱的圧縮で高温・高圧にし,そこに燃料を高圧で噴射して自己着火・燃焼させるエンジン。