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コンクリートをリサイクルする

佐藤准教授

持続可能な社会を支え、人の営みに寄り添い続ける材料。それがコンクリートです。

環境創生工学専攻
維持管理システム工学研究室
准教授

佐藤 靖彦 Yasuhiko Sato
[PROFILE]
◎研究分野/コンクリート工学
◎研究テーマ/コンクリート構造の挙動解析と構造性能、コンクリートの複劣化機構、新材料によるコンクリート構造物の補強、コンクリートのリサイクル
◎研究室ホームページ/http://www.infra.eng.hokudai.ac.jp/~maintenance/

2050年に排出量は3倍に。
生まれ変わる廃コンクリート

 コンクリートは、水とセメントとの化学反応により形作られる建設材料です。コンクリート構造物が寿命を迎えると、その構造物は解体され分別処理されます。現在日本では年間約4000万トンもの廃コンクリートが出されています。この先、高度経済成長期に建設されたコンクリート構造物の更新に伴い、排出量が増加し、2050年には現在の排出量の3倍以上にまで跳ね上がることが予想されています。そこで私たちは、その有効利用方法として、廃コンクリートを適度な大きさに砕いた塊を、新しいコンクリートの骨材として再利用する方法について研究してきました。このようなコンクリート塊を「再生骨材」と呼びます。この再生骨材は、純粋な石ではなく、石にペーストが付着したものです。この付着したペーストがさまざまな悪さをします(図1)。私たちは、その量や質がどの程度であれば北海道のような厳しい環境下でも使用できるのかを、実験および解析により明らかにしました。そして、平成14年には、土木研究所寒地土木研究所をはじめとする北海道内の他の機関の方たちと協力し、私たちが製造した再生骨材を使ったコンクリート製品を岩見沢の一般国道に実際に設置しました(図2)。その後の5年間、強度や耐久性を追跡調査し、十分な性能を有していることを確認しました。

“悪役”ペーストを取り除く
逆転の発想の基礎研究に着手

再生骨材の適用範囲をさらに拡大するためには、再生骨材の品質向上が欠かせません。そのためには、骨材に付着しているペーストをできる限り取り除く必要があります。
 コンクリートは、酸により化学的に劣化することが知られています。そこで私たちは、このことを逆手に取って、コンクリート塊を酸性廃水に浸けたり微生物を接種したりしてペーストの脆弱化を図り、骨材をきれいに取り出す方法を考案しました。基礎研究に着手したばかりであるこの方法の実用化までの道のりは長いのですが、いつしか、コンクリート中の骨材の全量をリサイクルできるようにしたいと考えています。

図1 普通骨材(左側)と再生骨材(右側)を使ったコンクリートの破壊の様子をシミュレーションした結果。
図1 普通骨材(左側)と再生骨材(右側)を使ったコンクリートの破壊の様子をシミュレーションした結果。
骨材に付着したペースト(白い部分)にダメージが集中している。

図2 再生骨材を使用したコンクリートの設置状況。
図2 再生骨材を使用したコンクリートの設置状況。青いジャケットが著者。

図3 微生物を接種したペーストの脆弱化試験の様子
図3 微生物を接種したペーストの脆弱化試験の様子

technical term
骨材 コンクリートの中に大量に混入されている石。骨材はコンクリート全体の約70%を占める。