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リサイクルのための選別技術の開発

恒川教授

「分けるのなんかワケない!」正確に分ける技術で都市資源に新たな光を。

環境循環システム専攻
資源再生工学研究室
教授

恒川 昌美 Masami Tsunekawa
[PROFILE]
◎研究分野/リサイクル工学、資源処理学
◎研究テーマ/廃棄物の資源化・リサイクル、未利用資源の活用
◎研究室ホームページ/http://mp-er.eng.hokudai.ac.jp/indexjp.htm

Urban Mine(都市鉱山)に眠る
有価物の選別・回収技術を開発

 廃棄物中の有価物を回収し、素材やエネルギーとして活用するためには、都市域で廃棄物を資源化し、リサイクルするための拠点として、Urban Mine(都市鉱山)を構築することが必要です。そこでは、できるだけ少ない手間とエネルギーで廃棄物中の有価物を選別・回収できる技術の開発が重要となります(図1)。
 私たちの研究室では、物質相互の比重差を利用して選別する湿式比重選別機(RETACジグ)を開発・実用化しました。本機は、図2に示すように極めて簡単な装置であり、水中の固定網(床網)の上に選別室を、下に空気室を置き、この空気室へ圧縮空気を送気すると選別室内に上昇流が、また排気すると下降流が生じます。粒子の水中での沈降・上昇速度は比重により異なるため、選別室内の粒子にさまざまな波形パターンの脈動する水流を与えることで、比重別に粒子を床網上に成層させ、分離することができます。連続的に選別する場合は、例えば左端から粒子を水とともに供給し、脈動水中で比重別に成層させながら右方向へ移動させ、右端から下層産物と上層産物を回収します。

比重が同じものも水中選別
多様なリサイクル分野で活躍中

 水に浮く物質同士を選別する場合は、「Reverseジグ」のように選別室の上部に天網を設けると、この網の下に比重別に粒子が成層し、選別できます。比重が同じものでも、水に対する濡れ性に差があれば、床網の下の水室に気泡を導入すると、疎水性の粒子表面に微細気泡が付着するので、その粒子の見かけ比重が小さくなり、比重差が生じて選別できます。これが「Hybridジグ」の原理です。表面改質剤を用いると、さらに多くの物質相互の選別に適用できます。これらのジグを用いて各種プラスチックの選別をすると、精度よく、純度99%以上のものを回収できます。
 今、これらのジグは、種々のリサイクリングプラントにおけるプラスチックの選別や廃蛍光管からのガラス・リサイクル、重金属汚染土壌の浄化、廃コンクリートからの骨材回収、コバルトリッチクラストと基盤岩との分離、などの分野で用いられ、活躍し始めています。

図1 主な選別技術
図1 主な選別技術
浮  選:水中で水に濡れ難い物質を気泡に付着・浮上させて分離
重液選別:溶液の比重より軽いものを浮かせ、重いものを沈めて分離
磁力選別:強磁性の物質を磁石で分離
図2 開発・実用化したジグの例
図2 開発・実用化したジグの例

technical term
Urban Mine
(都市鉱山)
都市で大量に廃棄される携帯電話やパソコンなどの中に有価物が含まれていることに着目し、これらを鉱石に見立て、資源リサイクルを可能とする社会を築くための拠点。