特集TOPへ

地震動発生のメカニズムを知る強震動予測

笹谷教授

都市生活を揺るがす“そのとき”のために。
行政が進める地震対策に協力しています。

建築都市空間デザイン専攻
都市防災学研究室
教授 

笹谷 努 Tsutomu Sasatani
[PROFILE]
◎研究分野/強震動地震学
◎研究テーマ/スラブ内地震による強震動予測
◎研究室ホームページ/http://friuli-as.eng.hokudai.ac.jp/home.html

観測される強震動は、震源特性×
伝播経路特性×サイト特性

 地震は、地球内部の岩盤の破壊によって発生します。この破壊は、ある面を境にした相対的なすべり(断層運動)として発生し、大きな地震の場合、破壊(すべり)はある点から始まり、それは有限の領域(断層面)に拡大してゆきます。このすべりおよび破壊拡大様式が地震断層から放出される地震波の性質を決定づけます(これを震源特性と呼びます)。例えば、大きな地震ほどすべり量も大きく、結果として、大振幅の地震波を放出します。震源から放出された地震波は、震源からの距離とともにその振幅を減じながら伝播してゆきます(これを伝播経路特性と呼びます)。そして、最後に地表に到達しますが、地表が岩盤であるか、柔らかい地盤であるかによって地面の揺れ(地震動)は大きく異なります(これをサイト特性と呼びます)。昔から言われているように、岩盤よりも柔らかい地盤の方がはるかに大きな地震動となります。図1は、地震の震源から放出された地震波が地表に到達するまでの模式図です。

図1 地震波の発生と伝播の模式図 矢印は地震波線を、その長さは相対的な振幅を表す。
図1 地震波の発生と伝播の模式図
矢印は地震波線を、その長さは相対的な振幅を表す。

宮城県沖地震の予測記録は
観察記録とほぼ一致

 地表で観測される地震動は、震源特性、伝播経路特性、サイト特性という3つの特性によって決定づけられます。これらの特性は、多くの地震に対して、異なった地盤条件で観測された地面の揺れの記録(地震計で観測された地震動の時刻歴)の分析から、明らかにされつつあります。例えば、震源特性としては、地震規模(マグニチュード)と断層面積、すべり量との関係、サイト特性としては、岩盤サイトに対する柔らかい地盤サイトでの地震動の増幅効果などです。ある地域で発生が予測されている大地震に対して、ある地点の構造物が十分な耐震性能を有するかどうかを評価することは重要です。このためには、予測されている地震の震源特性、対象地域の伝播経路特性、そして、対象地点のサイト特性を考慮した強震動予測を行う必要があります。図2は、2003年宮城県沖地震を対象に強震動予測手法の検証のために行った予測記録と観測記録との比較の例です。予測された加速度記録の過大評価を除けば、予測記録はほぼ観測記録と一致していることがわかります。こうした研究が都市防災対策の基盤を支えています。

図2 予測記録(赤線)と観測記録(黒線)の比較例 Maxは最大値を表す。
図2 予測記録(赤線)と観測記録(黒線)の比較例
Maxは最大値を表す。

technical term
耐震性能 地震動に対して構造物が耐えられるかどうかの安全性の度合。