粘土鉱物―千の用途を持つ変な物質
Clay minerals- Funny material with thousand uses
[PROFILE]
○研究分野/環境鉱物学、地球化学、廃棄物処分工学
○研究テーマ/ナチュラルアナログ、鉱物の変質・溶解・沈殿の速度論、 有害元素の吸着と地球化学モデリング
○研究室ホームページ/http://eg-hokudai.com/
Tsutomu Sato : Professor
Laboratory of Environmental Geology
Division of Sustainable Resources Engineering
○Research field : Environmental mineralogy, Geochemistry, Waste disposal engineering
○Research theme : Natural analogue, Alteration, dissolution, precipitation kinetics of minerals,
Adsorption of hazardous elements on mineral surface and geochemical modeling
○Laboratory HP : http://eg-hokudai.com/
鉱物や火山灰が“腐って”できる
どこにでもあるお役立ち粘土
粘土は、古くから陶磁器・レンガ・セメントなどの原料や石鹸・洗剤などに利用されてきました。最近では医薬品や化粧品の成分としても使われ、千の用途を持つ素材と言われています。私達の日常のどこにでもあるこの粘土、実は長石などの鉱物や火山灰が水と接触して“腐って”できることを知っていますか?その構造を原子間力顕微鏡で調べると、小さいながらも粘土鉱物の板状の結晶を観察できます(図1)。
この板状の粒子と粒子の間には水が入りこむことができ、水と一体化してムースのようになると、それ以上水を通さない止水バリアになります(図2)。粘土のこの性質を期待して、放射性廃棄物の地層処分のバリア材として使用が考えられています。水が入ってきても膨れて通さない、地震で岩盤に亀裂が入っても液体のようにふるまって亀裂を埋める、万が一放射性核種が漏れてもなるべくそれを外部に漏らさない、といった具合です。
粘土は万能ミルフィーユ
クリーム次第で広がる用途
粘土自身は無機物ですが、その板と板の間には有機物を入れることもできます。お菓子のミルフィーユのように粘土がパイ生地の役割を果たし、さまざまな“クリーム”をはさむことで粘土-有機物の複合体の膜を作ることができます。
例えば、熱に弱いナイロンなどの樹脂も粘土の板と板の間に入れると耐熱性が向上します。最近熱に強い樹脂にお目にかかれるのも、その実用化の一例です。また、圧力を加えると色が変化する有機物を間に入れると、圧力センサーになる膜を作ることができ、光が当たると反応する有機物を入れると、光記憶が可能な膜を作れるのです。光合成をするクロロフィルを使えば、お日様に当てると化学エネルギーが得られる人工観葉植物をつくりだすことも夢ではありません。
こうした幅広い応用がきくのも、粘土が小さくて不完全な結晶であるおかげです。自然が作った変な物質、粘土は不完全だからこそ面白い。研究室ではそんな粘土の研究が思う存分できますよ。
粘土鉱物 | 粘土粒子の基本をなす鉱物の総称。 |