液体金属実験が詳らかにする現象の「なぜ?」
Liquid metal experiments elucidating physics of phenomena
[PROFILE]
○研究分野/流体力学
○研究テーマ/流れの安定性・遷移現象の解明
○研究室ホームページ/http://ring-me.eng.hokudai.ac.jp/j_index.html
Yuji Tasaka : Associate Professor
Laboratory for Flow Control
Division of Energy and Environmental Systems
○Research field : Fluid mechanics
○Research theme : Elucidating flow instability and transition phenomena
○Laboratory HP : http://ring-me.eng.hokudai.ac.jp
水や油のように流動しつつ
熱や電流を通す液体金属
「液体金属は別に『変なモノ』ではないですけど?」と、本誌への参加を依頼してくれた小林先生に口を尖らせながら反論した後で、やっぱり「変」かも、と考え直して本原稿を書いています。ここでは、液体金属がもつ特徴とそれを使った実験の面白さについて紹介したいと思います。
液体金属とは、常温あるいは比較的低い温度で液体の状態をとる金属とここで定義することにします。水銀や錫(融点230℃)、ナトリウム(融点100℃)などがこれに当てはまります。特徴は、水や油など他の液体と同じように流動しつつ、金属なので熱を伝えやすいこと、酸化しやすいこと、表面張力が大きいこと、電流がよく流れるので磁場の影響を受けやすいこと。その特性から最近ではCPU冷却の冷媒などにも用いられています。
地球深部の現象を
液体金属実験で再現
我々の研究室では、流体が関係する諸現象を、モデル実験を通して理解する研究を行っています。液体金属を使った実験もその一つです。主に使っているのはガリウム(融点30℃、図1)で、水銀やナトリウムに比べて扱いやすく、固体のまま保管できるのがメリットです。これを使って再現を目指すのは、溶鉱炉に代表される製鉄プロセスおよび地球深部、溶融鉄で形成された地球外部コアの運動です。いずれも全く手の届かない、観測すら難しい現象ですが、液体金属を用いることでその現象の一部を実験室で再現することができます。
また我々の研究室で開発した、超音波を用いた流れ計測手法により、その内部の流れを「見る」ことも可能です。これまでの研究により、外部コアの流動を特徴づける、新たな時間スケールの流れを見いだすことができました。図2は、「固化過程の液滴のふるまい」を知るために始めた実験研究で、偶然撮影した面白い写真です。なぜ規則的な「皮むき」が生じるのか、また「皮」の物質は何なのか、凝固や化学反応の専門家と討論していますが、まだ解明の糸口が見えません。疑問の解決が新たな「なぜ」を生み出す、流体実験の面白いところです。
ガリウム | 金属元素の一つ。元素記号Ga、原子番号31。 融点が低く、半導体の材料などに使用されている。 |
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