工農研究特集 学部を超えて拡大する工学研究:工農連携のフロントランナー

地産地消型のバイオエネルギー利用システム
Bioenergy Systems Based on Local Production and Consumption

ものづくりの農学と地域を守る環境研究持続可能な社会を目指すベクトルは同じ 環境創生工学部門 循環計画システム研究室 准教授 石井 一英

[PROFILE]
○研究分野/廃棄物管理工学、環境システム
○研究テーマ/バイオエネルギー利用による持続可能な社会の創出
○研究室ホームページ
http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/smcsp/

Kazuei Ishii : Associate Professor
Laboratory of Sound Material-cycle Systems Planning
Division of Environmental Engineering
○Research field : Waste management, Environmental systems
○Research theme : Establishment of sustainable society by bioenergy utilization
○Laboratory HP :
http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/smcsp/

身近な不要物から
エネルギーを得る

毎日の生活から排出される食品廃棄物(生ごみ)や酪農業から排出される家畜ふん尿、稲の収穫後に大量に発生する稲わらなどは、バイオマスと呼ばれており、「再生可能な生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義されています。バイオマスは、肥飼料や化成品原料だけではなく、燃料や電気、熱といったエネルギーにも変換できます。

我々は、地域で発生したバイオマスをエネルギー変換して地域で利用する地産地消型のバイオエネルギー利用システムを普及させるための研究を行っています。多くの資源を輸入に頼っている日本にとって、バイオエネルギー利用システムの構築により自立性を高めることが急務です。

図1
図1 牛ふんのバイオガスプラントによる静脈物流 Figure1: Reverse logistics of cow manure by biogas plants.

バイオガスプラントは
静脈物流のポンプ役

バイオガスプラントでは、牛ふんなどを密閉した容器の中で微生物の力で分解し、バイオガスに変換します。バイオガスには、天然ガスの主成分と同じメタンガスが約60%含まれており(残りは二酸化炭素)、このメタンを電気や熱、自動車燃料として利用することができます。さらに発酵残渣を固液分離すると、固形分は敷料として、液分は土づくりに必要な窒素やカリウム、リンを多く含んでいるので、液肥として再利用することができます。すなわち、放っておくと悪臭や河川・地下水汚染につながってしまう牛ふんを、エネルギーや敷料、肥料としてもう一度使える形態にまで変換するのが、バイオガスプラントの役割です(図1)。静脈物流を牽引するポンプの役を果たしています。良い肥料は健全な牧草づくりに、良い牧草は健康な牛を育てるのに役立ちます。そして最終的には、地域の酪農業の活性化と国際的競争力の向上につながります。

私たちは、バイオガスプラントが地域にもたらす貢献を、資源、環境、技術、経済、社会のあらゆる観点から定量評価することを研究し、大小のバイオガスプラントを地域特性に応じた社会インフラとして普及させ、持続可能な社会形成に近づけることを目指しています。バイオエネルギー利用システムは、人類の未来に貢献する魅力的な研究対象です。日本一のバイオマス利活用地域である北海道の優位性を存分に活かせるところにも、やりがいを感じています。

図2
図2 北海道の鹿追町ではマンゴー栽培ビニールハウスやチョウザメの養殖施設が隣接され、バイオガスが有効に利用されている。 Figure2: Biogas is effectively used for mango farming at the green houses and sturgeon farming at the special building in Shikaoi Town, Hokkaido.
technical term
バイオエネルギー バイオマスから得られた環境に優しく安全なエネルギー。
近年、太陽光や風力と同様に再生可能エネルギーとして注目されている。

スペシャル対談

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