「生物?」と工学

「生き物」とは何か? ということを考えてみると、
生き物とそれ以外のものの境界は実はあいまいです。
細胞からDNAをその機能を保持したまま
取り出すことはできますが、
DNA自体が動いたり餌を食べたりはしません。
一方で、単純な動きをする素子を組み合わせることで
“まるで生きているように” 動くロボットを作ることもできます。
工学研究者は、さまざまな生き物の機能や、
“生き物みたいな”機能を作り出し利用しています。
本特集は、そんな生き物と生き物っぽい研究の
一部をご紹介します。

TALK LOUNGE

〉〉〉 生物を自在に操る研究者

 技術の進歩と共に、生物が持つ高度で精密な機能の仕組みが次々と明らかになっていくと、「使ってみたい」「作ってみたい」と考えるのが我々工学研究者です。例えば、微生物の複雑な化合物を合成する能力を利用すると、薬を作ることができます。現在使われている医薬品の多くで、合成の一部に生物合成が使われています。また、生物から取り出した分子は、センサーや材料などさまざまな目的に活用できます。このような生物のハードウェアに人間が新しいソフトウェアを導入する研究が盛んに行われています。

〉〉〉 鳥を見て飛行機を作るがごとく

 生物の工学的活用はそれだけではありません。生物の仕組みを取り入れたモノづくりも実現可能です。人工筋肉で駆動するロボットは、モーターではできないような動きをします。生物のソフトウェアを読み取って、人間が新たなハードウェアを作るというわけです。アイディア次第で可能性は無限です。あなたなら何を作りますか?

(コーディネーター 松本 謙一郎)

生物のハードに工学の知恵で新ソフトを導入