卒業生コラム
悩み迷い続ける日々から得る達成感株式会社アトリエブンク |
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[PROFILE]
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建築への憧れと葛藤
建築都市学科へ入ると、設計演習での課題に日々の大半を費やす毎日。与えられた課題に対して一定期間で自分なりのカタチを出すというこの作業は、おもしろい反面、苦しくもありました。私は具体的にモノをつくることは好きでしたが、デザインすることには自信が持てなかったように思います。製図台を並べて課題に取り組む同期に刺激される一方、やっていけるのかと葛藤することもありました。建築をつくる過程では、敷地や気候、建物用途や規模、必要諸室と配置・動線、使い方などのソフト面と、さまざまな条件を整理してカタチにしていきます。その楽しさが課題を進める中でわかってきて、複雑な条件を頭で考えながら、手を動かして作り上げていく魅力にはまってしまいました。
就職のきっかけ、「公共建築をつくりたい!」という思い
私の勤めるアトリエブンクは北海道の設計事務所で、プロジェクトの7~8割が公共建築です。大学時代の設計演習の中で、私は「小学校」の課題が一番おもしろく、一生懸命取り組んだのを覚えています。それをきっかけに、不特定多数の人が使い、地域の中で大きな役割をもつ公共的な建物を設計したいと思うようになり、現在の会社に就職しました。
建物の設計から完成、成熟する楽しみ
1つの建物ができるまでにどれくらいの期間を要するか、これは規模にもよりますが、私たちが手掛ける建物の多くは、基本・実施設計1~2年+工事1年で、全体で2~3年というスパンです。基本設計期間は、建物の大きな方針を決定するとても大事な期間で、条件整理、コンセプト設定、図面作成、模型作成と進めながら、何度も施主と打合せを重ねて案を固めていきます。
実施設計期間は、構造設計、設備設計、外構設計と具体的な打合せを重ね、全体の詳細を決定しながら実施設計図を作成します。この期間はデスクワークが主で、CAD画面と向き合う日々が続きます。どんな素材、色を使うかもこの段階でCGパースを作成して検討します。工事期間になると、工事現場に毎週通い施工者との打合せを重ねながら、実際の建物の仕上がり、性能などを監理します。
私は入社してから3年目で小さな町の小学校を担当し、基本設計から工事監理まで、2年半かけて携わり完成を迎えました。自分の設計した建物が実際に建ったときの感動と達成感は、長い時間をかけて悩み迷い決断してきたプロセスがあるからこそ味わえるもので、この仕事の醍醐味です。毎年訪れるたびに、小学校で子どもたちが走りまわる姿、また地域の中で建物が成熟していく姿を見ると、とても感慨深く思うと同時に、新たな仕事のモチベーションへとつながります。
学生時代の経験と変わらぬ生活
建築設計を志すには、歴史を知らずして始まらず、大きな視点と細かい視点で物事を考えることが大事です。私は大学院で建築史意匠学研究室に所属していました。地域形成史を研究するほか、研究室の仕事として歴史的建造物の実測調査を行い、図面におこすという作業を経験しました。学生時代に実際の建物細部に触れ、その構造を学び興味を抱いたことは、今の仕事に間違いなくつながっていると実感しています。
また、1つのプロジェクト(課題)に対して自分なりのかたちを出すために悩み奮闘する日々は、学生時代から変わりません。製図室で納得いくまで課題に取り組み続けて得た「粘り強さ」をこれからも仕事に生かして、よりよい建築をつくっていきたいと思います。