特集05

バイオ技術を使った資源・環境問題への解決アプローチ
Approach to Resource and Environmental Problems Using Biotechnology

微生物の未知なる機能を引き出して環境問題の解決に役立てたい 環境循環システム部門 資源生物工学研究室 准教授 中島 一紀

[PROFILE]
○研究分野/生物反応工学
○研究テーマ/タンパク質や微生物を用いたバイオソープションおよび
 バイオミネラリゼーション技術
○研究室ホームページ
href="http://wwwgeo-er.eng.hokudai.ac.jp/

Kazunori Nakashima : Associate Professor
Laboratory of Biotechnology for Resources Engineering
Division of Sustainable Resources Engineering

○Research field : Biochemical reaction engineering
○Research theme : Biosorption and biomineralization using proteins and microbes
○Laboratory HP :
href="http://wwwgeo-er.eng.hokudai.ac.jp/

生命の維持に欠かせない
有機物と無機物の接点

 すべての生物は有機物と無機物からできています。一見、物理化学的な性質が相反するように思えるこれら両者も、生体内ではうまく相互作用しながら生物の生命・機能維持に貢献しています。たとえば、骨や貝殻にはタンパク質が含まれており、タンパク質が硬組織の形成をコントロールしています。
 また、生命維持に重要な役割を担っている酵素タンパク質の中には、金属イオンをもつものが多くあり、酵素分子が特定の場所で金属イオンをつかまえています。このように、有機物と無機物は性質が違うようにみえて、それらの間にはしっかりとした“接点”があるのです。

低コスト・低環境負荷の
金属回収システムに期待

 さて、私たちの研究室では、生物機能をうまく利用することで資源・環境問題の解決に取り組んでいます。たとえば、微生物やタンパク質を利用した低環境負荷の鉱物化技術(バイオミネラリゼーション)(図1)や、廃水中の有害金属の除去や都市鉱山からの有価金属の回収を微生物を使って行う技術(バイオソープション)(図2)の研究を行っています。ここでもやはり有機物と無機物の接点に着目することが大事です。無機物との接点となるタンパク質は微生物がもつ遺伝子をベースに作られるので、その遺伝子を調べることで色々なことが可能になります。
 たとえば、どのタンパク質がどのような金属を吸着しやすいかを推定したり、遺伝子工学の技術を使って特定の金属だけを吸着するタンパク質をデザインすることもできます。しかも、微生物は栄養分を与えれば自然に増殖(複製)して金属イオンの吸着材となるので、バイオソープションは低コスト・低環境負荷の金属回収システムになると期待されます。
 生物の機能はとても巧妙かつダイナミックです。まだまだ生物の中には魅力的な機能がたくさん眠っています。それらを新たに発見し、最大限に活かしながら、資源・環境問題を解決できる循環社会構築型バイオテクノロジーを開発したいと思っています。

図1 図1 タンパク質を用いて作製した無機化合物(シリカ) Figure1:Preparation of silica by using a protein.

図2 図2 微生物表面での金属イオンの吸着  Figure2:Biosorption of metal ions on microbial cell surface.

technical term
都市鉱山 廃棄家電などに含まれるレアメタルなどの金属資源。天然資源に乏しい日本にとって重要なリサイクル資源として見直されている。