高分子の分子構造でナノを制御する
Controlling nanostructures through macromolecular architecture
[PROFILE]
○研究分野/高分子化学
○研究テーマ/特殊構造高分子の精密合成
○研究室ホームページ
http://poly-bm.eng.hokudai.ac.jp/mol/
Takuya Isono : Specially Appointed Assistant Professor
Laboratory of Molecular Materials Chemistry
Division of Applied Chemistry
○Research field : Polymer Chemistry
○Research theme : Synthesis of architecturally complex polymers
○Laboratory HP :
http://poly-bm.eng.hokudai.ac.jp/mol/
ペットボトルからスマホまで
社会に欠かせない高分子材料
化学の醍醐味は今までこの世に存在しなかった新しい物質あるいは材料を自分の望み通りに作り出せることにあります。新たな材料で社会を豊かにすることが、化学者の最大の使命の一つです。社会をいっそう豊かなものにした材料の最たる例は、高分子に他なりません。ペットボトルや発泡スチロールなどの単純なものからスマートフォンやパソコンに至るまで身の回りの製品は高分子材料で埋め尽くされており、現代生活は高分子材料なくして成立しません。
高分子とは数千から数百万の分子量をもった巨大分子であり、分子量が数十から数百程度の小さな分子とは全く異なった性質を示します。巨大な分子であるがゆえに高分子の分子構造の可能性は無限大です。我々は分子構造の多様性をさらに拡大するため、星形や環状などの特殊な分子形状を持った高分子の研究に取り組んでいます(図1)。一般的な高分子は直線状の分子形状ですが、非直線状の分子形状を導入することで化学的組成が全く同じであるにもかかわらず、高分子の材料物性を制御できることがわかってきました。
超微細な加工を可能にする
ブロック共重合体を構築
最近、我々はこのような知見を活かした高分子材料の開発をいくつか展開してきました。水と油の関係にある2種類の高分子が1つの分子内でつながっている「ブロック共重合体」と呼ばれる材料は、数十ナノメートル程度の周期を持つ規則構造を自発的に形成します。我々は、あるブロック共重合体に星形の分子形状を取り入れることで、これまでほとんど報告例のない10ナノメートル以下の規則構造を構築することに成功しました(図2)。
このようなナノ構造体は半導体デバイスなどの超微細加工を可能にするレジストとして期待されており、微細化限界を迎えつつある光リソグラフィーにとって代わる技術として国内外でしのぎを削る研究が展開されています。我々も分子形状の設計というアプローチで、これまでに出来なかったことを可能にする新たな高分子材料の開発に日夜励んでいます。
光リソグラフィー | 半導体製造技術の一つ。露光装置を使ってシリコンウェハー上のレジスト(感光材料)に回路パターンを転写する手法。 |
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