特集01

金の発光
Fluorescence of Gold

想像もできないことが日常的に起きている 化学実験の不思議を一緒に体験しませんか 材料科学部門 先進材料ハイブリッド工学研究室 助教 石田 洋平

[PROFILE]
○研究分野/光化学、材料科学
○研究テーマ/金属ナノ粒子の光機能材料の開拓
○研究室ホームページ
 http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/limsa/

Yohei Ishida : Assistant Professor
Laboratory of Advanced Materials Hybrid Engineering
Division of Materials Science and Engineering
○Research field : Photochemistry, Material Science
○Research theme : Metal nanoparticles for novel photo–functional materials
○Laboratory HP :
http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/limsa/

ナノテクノロジーによる
金属の新しい顔 

 オリンピックのメダルでおなじみの金・銀・銅は、私たちにとって最も身近な元素の1つです。「一番好きな元素はなに?」と聞かれたら、「金」と答える方も多いのではないでしょうか(高いですしね)。私たちは、これらの金属がナノの世界に踏み込んだ時に発現する新しい特性に魅了され、研究を行っています。
 皆さんは金粉を見たことがありますか?お正月のお雑煮に入れるご家庭もあるかもしれません。この金粉で大体数mmくらいの大きさですが、他方、私たちが研究で取り扱っている金は、1mmの正方形の金粉を100京等分してできるくらいの小ささです(図1)。直径が約1nmなので、「金のナノ粒子」と呼んでいます。目に見える金はもちろん金色で、美しい金属光沢を放っていますが、面白いことに金がナノ粒子になると、全く異なる性質を示すようになります。

図1 図1 金ナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真 Figure1:Transmission electron microscopic image of gold nanoparticles.

独自のナノ粒子合成技術で
世界最高の発光性能を実現

 金ナノ粒子の発光は、ナノサイズすることで発現する最も興味深い性質の1つです。目に見える大きさの金では電子準位が連続的であるのに対し、ナノ粒子になると有機分子のような不連続な電子準位が形成されます。この不連続な電子準位によって、金ナノ粒子はある波長の光を吸収し、発光するというメカニズムです(図2)。
 金ナノ粒子の合成手法はいろいろありますが、私たちは独自の手法であるスパッタリング法を確立しました。この時に用いる有機物の種類と量を変化させることで、様々な大きさの金ナノ粒子を簡便に合成することに成功しています。最近では世界最高の発光性能を有する金のナノ粒子について論文報告もしています。金は生体安定性に優れた無毒な金属です。疾病や感染を調べる蛍光顕微鏡のバイオマーカーなど、医療分野の新たな発光材料としての応用にも期待が高まっています。

図2 図2 金ナノ粒子溶液の写真
左:太陽光下 右:紫外下  Figure2:Suspension of gold nanoparticles; left: under sunlight, right: under UV–irradiation.

technical term
スパッタリング法 プラズマにより生じたアルゴンのイオンを金塊に衝突させることで金のナノ粒子を叩き出し、液体に取り込んで安定化する手法。