「破壊」がつくる私たちの未来─壊れ方を調べ、壊し方を考える─

建築構造物の破壊、機械の破壊、破壊による事故など、
「破壊」という言葉を耳にするとき、
皆さんの中にはあまり良くないイメージが思い浮かぶかも知れません。
しかし、実は、原子や分子などのミクロの世界から
山や列島などの巨大なスケールに至るまで、
破壊に関わる現象は私たち人間の生活に深く関わっています。
「破壊」を知り、上手につきあい、これを利用することも
工学の大切な役割のひとつであることを本特集でご紹介します。

TALK LOUNGE

〉〉〉 破壊に魅せられた研究者たち

 破壊に携わる工学は、どちらかというと日陰の学問と見られがちですが、実は最先端の研究に支えられています。本特集では「破壊」に関するホットな話題を5本選りすぐり、はじめに時々メディアで話題になる「金属疲労」にまつわる研究を、次に「発光性メカノクロミズム」という極めて新しいトピックスを紹介します。後者は機械的な刺激により物質の色彩や発色が変わるという現象で、いま世界中の研究者が注目しています。

〉〉〉 破壊研究の進化が築く人間社会

 破壊の研究には、ジェットエンジンや発電タービンにまつわる「小さな脆さ」を計測する新技術もあり、「建築構造」の研究は壊れない建物を造るために必要不可欠であることもわかっていただけると思います。「岩盤斜面」の話題では、寒冷地における岩盤の崩落に関する精密な研究の一端を解説しています。本特集を読んで、破壊に関わる研究が我々の社会をさまざまな側面から支えていることを感じとっていただきたいです。

(コーディネーター 中村 孝)