寒冷地における岩盤斜面を科学する
Scientific study of rock slope stability in cold regions
[PROFILE]
○研究分野/岩盤工学
○研究テーマ/極限環境下における岩石の力学的性質の解明
○研究室ホームページ
http://rock.eng.hokudai.ac.jp/japanese.html
Jun-ichi Kodama : Associate Professor
Laboratory of Rock mechanics
Division of Sustainable Resources Engineering
○Research field : Rock Engineering
○Research theme : Mechanical behavior of rocks exposed to ultimate environment
○Laboratory HP :
http://rock.eng.hokudai.ac.jp/index.html
寒冷地における岩盤斜面の
過酷な環境を実験室で再現
岩盤斜面の脚部にはその自重により大きな力がかかり続けています。北海道のような寒冷地の岩盤斜面ではさらに、その表面付近の温度が氷点下になるという過酷な環境におかれます。このため、寒冷地の岩盤斜面の安全性を評価するには、凍結融解作用による岩石の劣化現象に加え、凍結した状態で大きな力を受け続けたときの岩石の性質を明らかにする必要があります。
我々の研究室では、岩石に最大20トンの力を加えることのできるコンピュータ制御の載荷装置と、マイナス30℃からプラス30℃の範囲で温度を自動的にコントロールできる温度制御ユニットを組み合わせることで、寒冷地の岩盤環境を実験室で再現できるシステムを構築しました(図1-a)。
このシステムを用いて様々な岩石の強さを調べてみると、凍結することで強くなる岩石と、逆に弱くなる岩石の2つのタイプがあることが分かりました。現在は、AEと呼ばれる微小な破壊音と伸びや縮み(変形)を検知できるセンサーなどを岩石に取り付け、岩盤斜面の崩落の前兆現象の解明に取り組んでいます(図1-b)。
岩石の破壊プロセスを可視化
破壊の予知や対策に期待
岩石の間隙中にある水(間隙水)の凍結と融解の繰返しは岩石を次第に劣化させ、寒冷地の岩盤斜面の安全性を大きく低下させる要因になっています。我々の研究室では、X線CTスキャナーを用いて、岩石の内部の様子を観察し、凍結融解作用を受ける岩石の破壊プロセスを3次元的に捉えることに成功しました(図2)。現在、これらの画像データを分析し、き裂の進展に関する特徴や法則を探っています。これらが明らかになると、劣化を抑制する有効な対策工が開発でき、破壊の予知にもつながると期待できます。
また、寒冷地の鉱山では、採掘後山積みの状態で越冬した鉱石が破砕しやすくなることが経験的に知られており、凍結融解作用が関与している可能性が指摘されています。鉱石から有用な金属を分離・回収する過程では鉱石を破砕する必要があり、鉱石の劣化が進むほど、破砕に要するエネルギーを低減することができます。現在、凍結融解現象を積極的に利用して、低コスト鉱石破砕技術の開発を進めています。
AE | Acoustic Emission。材料の微小破壊に伴う高周波の破壊音。 圧力タンクや工作機械の刃こぼれの監視などに実用化されている。 |
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