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卒業生コラム

上村 隼太

生産視点の
モノづくりを目指して

富士ゼロックス株式会社
モノ作り技術本部
電子デバイス技術部

上村 隼太 Hayata Kamimura
[PROFILE]
2007年3月 北海道大学工学部原子工学科 卒業
2007年4月 北海道大学大学院工学研究科量子理工学専攻 入学
2009年3月 北海道大学大学院工学研究科量子理工学専攻 修了
2009年4月 富士ゼロックス株式会社 入社
モノ作り技術本部電子デバイス技術部に配属

高品質低コストを支える
生産技術

 みなさんはLEDと聞くと照明や信号機、ディスプレー等を思い浮かべるのではないでしょうか?実は富士ゼロックスで製造しているプリンタの画像描写にもLEDを使用しています。A3用のLEDプリンタには1万個以上のLEDが使われており、その光で感光体上に画像を書き込んで紙に転写します。印字の画素数はLEDの数で決まるため、LEDはプリンタの高画質を支えるキーデバイスとなっています。
 私はプリンタ用LEDの生産技術開発に携わり、新規生産ラインの立ち上げや品質改善を行ってきました。LEDなどの半導体はサブミクロンからナノオーダーの加工技術を必要とするため、所望の構造をいかにつくるかが重要であり、その工程を構築することが生産技術開発の仕事です。現在の業務についてから、製品の品質とコストに大きく影響を与える生産技術の重要性を知りました。自分が開発した工程で実際に製品が生産され、世の中に出ていくところを目にする、まさにモノづくりを実感できるのが生産技術開発の魅力です。

学生時代の経験を活かして

図1▲LEDの画像形成装置。約15,000個のLEDを感光体ドラム状に集光し画像を描写する。  現在はLEDの開発に携わっていますが、学生時代は半導体工学を専門にしていたわけではなく、その製造工程に関してはまったくの無知でした。そんな私が最初に驚いたことは、LED生産工場の管理体制です。半導体はごみやほこりに弱いため、工場内のパーティクル数を通常の室内に比べ1000分の1以下に管理されたクリーンルームで生産します。最大の汚染源は人であり、工場内ではマスクや手袋をつけて目以外の肌を出さず、エアブローで洗浄してからの入室が義務付けられています。最初は大型装置が並んだ中で作業する風景が異質に感じましたが、その徹底した管理により生産が維持されていることを知りました。
 しかし、どんなに管理しても生産ラインでは予期せぬトラブルが発生するものです。私が担当した工程でも改善の必要に迫られましたが、その助けとなったのは学生時代に培った科学的思考でした。改善のヒントの多くは生産現場に隠されており、それに気付くことができたのは、自分で試行錯誤しながら実験した学生時代の経験のおかげです。自ら原因分析や仮説構築を行い、課題を抽出し、対策検討と効果確認までできることが私の強みとなっています。

設計から生産までの
効率化を担う人材へ

図2▲クリーンルームで同僚との写真。明るく楽しい職場です。  近年は製品の短命化や開発コスト削減のため開発スパンの短納期化が進んでおり、設計段階での品質の作り込みがますます重要となっています。入社6年目の現在では次世代LEDの設計も担当しており、製造工程を考慮した後戻りのない設計を行うことが私の役割だと考えています。設計者としては、まだまだ経験が浅く苦労の絶えない日々ですが、生産技術開発の経験を活かし、設計と生産の橋渡しとして活躍したいと考えています。

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