自然の流れを視る原動力
Tool to visualize flows in natures
[PROFILE]
○研究分野/流体力学、海洋工学
○研究テーマ/海洋波浪下の流体運動
○研究室ホームページ
http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/coast/
Yasunori Watanabe : Associate Professor
Laboratory of Coastal and Offshore Engineering
Division of Field Engineering for the Environment
○Research field : Fluid Mechanics, Ocean Engineering
○Research theme : Fluid flows in ocean waves
○Laboratory HP :
http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/coast/
流れを視るレーザーシート
混相流の物理情報が明らかに
自然界は、未だその多くが明らかでない気体、液体、固体が混在する複雑な乱流が支配しており、様々な実験を通して研究が進められています。照明としてのレーザーは、数十年前から流れの面的可視化を実現する新たな技術として使われ始め、今や水や空気の流速だけでなく、川や海を流れる土砂や水に溶解する気体、水温など流れの多様な性質を計測する上で欠くことのできないツールとなりました。
水や空気は透明なので、通常その流れは見えませんが、流れの動きがわかるように微粒子群を混入した流れの中にレーザー光線をシート状に屈折させた面的照明(レーザーシート)を照射すると、シート面上を通過する個々の粒子からの反射光の分布を画像計測することで、移動速度の空間分布を知ることができます(図1)。
さらに、レーザーによって励起し異なる波長の蛍光を発する微粒子を同様に追跡し、反射光と蛍光を分離すると、混相流中の気体、液体、固体それぞれの速度分布を同時に計測できます。こうして得られた未知の物理情報から複雑な流れの実態が解明されるようになりました。
大気と海の相関関係を見つめ
海洋環境予測のモデルを構築
蛍光試薬ウラニンの水溶液の蛍光輝度は重炭酸イオンの量に応じて変化し、ピレン酪酸水溶液は酸素イオンの量がその蛍光輝度を決定します。つまり、これら蛍光試薬の水溶液にレーザーシートを照射して励起した蛍光強度の分布を撮影すると、ウラニン水溶液は水中に溶解した炭酸ガス濃度、ピレン酪酸水溶液は溶存酸素濃度の平面分布を計測することが可能となります(図2)。海洋学において、海洋生物の生態系に重要な役割を果たす酸素の海洋への輸送や、大気の炭酸ガス濃度の上昇に伴い海中へ溶解が加速している二酸化炭素の輸送メカニズムは、意外にも未だ明らかではありません。これらレーザーを利用した気体の溶解と輸送拡散の可視化計測によって、将来の海洋環境予測の物理モデルを構築するための研究を行っています。
混相流 | 気泡や土砂を含む流れのように物質の複数の相が混ざり合って流動する現象。 |