らせんレーザーでナノらせん物質をつくる
Nano-chiral structure fabrication by twisted light from laser
[PROFILE]
○研究分野/超高速非線型光学、光量子科学
○研究テーマ/超短トポロジカル光波の発生・制御とその応用
○研究室ホームページ
http://iphys3-ap.eng.hokudai.ac.jp/
Ryuji Morita : Professor
Laboratory of Nonlinear Optics and Laser Physics
Division of Applied Physics
○Research field : Ultrafast nonlinear optics, Photon science
○Research theme : Generation, control and application of the ultrashort topological optical pulses
○Laboratory HP :
http://iphys3-ap.eng.hokudai.ac.jp/
レーザーの波面を
らせん状に変えた「光渦」
光は皆さんのまわりにあふれている身近なもので、宇宙誕生のビッグバンが起きた直後、ほんのわずかな時間が経ったときから宇宙に存在します。光は波であると同時に粒子であるという性質をもっています。光を波として考えるとき、重要な物理量の一つに位相があります。位相は波の振動の山・谷を決める量です。皆さんが明かりに使う蛍光灯やLEDはこの位相があまり長い時間、長い距離保たれていませんが、それに対し、レーザーは位相が長い時間、長い距離保たれた「きれいな」光です。
通常のレーザー光は波面がおおよそ平面であり、この平面上で波の山・谷が揃っています。ところが、レーザー光にある工夫をすると、この山・谷をらせん状に変えることができます。このような波面がらせん状の光は光渦(ひかりうず)と呼ばれ、光を粒子と考えると、光渦はビームの中心軸に対し公転運動(地球が太陽のまわりをまわるような運動)しながら前に進む力をもっています(図1)。
世界初、光渦のらせん構造を
金属に転写する実験に成功
レーザー光をある短い時間のみ光っているパルスの形にして金属に照射すると、金属が溶ける、あるいはイオンとなって空中に飛び散ることで金属表面の形状を変えることができます。そこで我々は、らせん位相をもつ光渦レーザーパルスを作り、緩やかな絞りで金属表面に照射しました。すると、光渦の持つ公転運動の力により、ナノサイズでありながら金属をらせん状の針構造にすることができました(千葉大学融合科学研究科・尾松孝茂研究室との共同研究:図2)。これは、光の波面構造を物質に転写した世界で最初の実験結果です。
光渦には、らせんの向きが右巻きと左巻きの2種類があり、らせんの向きに応じて、ナノサイズのらせん状針構造の向きも変えることができます。現在はこうした成果を踏まえ、非常に短いレーザーパルスをつくり、レーザー光と物質の相互作用による新たな現象を見出すことを目指して研究を行っています。
波面 | 光の波の山・谷が等しい場所がなす図形。 |
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