特集01

社会とともに変化するごみ問題を、
広い視点とツールで解決する
Solve constantly-changing problems of solid
waste from a broad perspective and by various tools

自分の五感で学ぶ現場主義を実践!ごみ処理から考える私たちの社会像 環境創生工学部門 廃棄物処分工学研究室 教授 松藤 敏彦

[PROFILE]
○研究分野/廃棄物処理
○研究テーマ/総合的廃棄物処理システムの分析・評価・最適化
○研究室ホームページ
 http://wastegr2-er.eng.hokudai.ac.jp/home/index.htm

Toshihiko Matsuto : Professor
Laboratory of Solid Waste Disposal Engineering
Division of Built Environment
○Research field : Solid waste management
○Research theme :Assessment and optimization of Integrated Solid Waste Management
○Laboratory HP :
 http://wastegr2-er.eng.hokudai.ac.jp/home/index.htm

多様性・環境影響・社会性
三つの特徴を抱えるごみ問題

  皆さんが「ごみ」と言ったら、どんなものを思い浮かべるでしょうか。燃えるごみ?びんや缶?それとも焼却などの施設でしょうか。社会の活動にともなって、必ずごみが発生します。家庭からも事業所からも、そして産業からも、です。そのため、いろんなごみがあり、それぞれに最も適した処理を行わなければなりません。
 私たちは家庭でごみを「分別」しますが、その方法によってもごみは変化しますし、中には有害なものもあり、特別な処理が必要となるかもしれません。対象の多様性、これがごみ処理の第一の特徴です。
 家庭ごみの場合、焼却してエネルギーを回収すると化石燃料の使用を節約できます。さらにその回収効率を上げるには生ごみを分ければいいのですが、もし生ごみを燃やさずに埋め立てると悪臭が発生し、カラスやトンビの餌場となるだけでなく、安定化するまでに時間がかかって費用もエネルギー消費も増えてしまうかもしれません。部分的な最適化は逆に環境影響を増すかもしれない、これが第二の特徴です。
 ごみ処理施設は公共的施設と言えますが、住民から嫌われます。その結果、必要な施設が住民の反対によって建設できないことがしばしば起こります。健康リスクをできるだけ小さくすることはもちろんですが、住民が受け入れられるものでなければならない。ごみの分別も住民の協力と理解が必要です。社会性が強い、これが第三の特徴です。

図1 図1 家庭から発生したごみの流れ Figure1:Flow of waste generated from households. 最近では堆肥化、メタンガス化などを行う自治体もある。事業所からのごみ、産業からのごみもあり、ごみの種類と処理の組み合わせから、最も望ましいものを選ばなければならない。

日本で少ない廃棄物の研究室
社会とつながる広範囲をカバー

 このように、ごみ処理は複雑で、私たちの生活と関連の深い「社会のシステム」です。単一の技術や対象のみに限るのではなく、製造段階の工夫から使用後のリサイクルまで、技術だけでなく社会や経済も含めた、広い視点での対策が必要です。社会や経済、生活形態の変化とともに、次々と新しい課題が生まれる分野です。
 私たちは日本で数少ない廃棄物を専門とする研究室であり、よりよい社会のための幅広い対象の研究を行っています。次代の社会を担う人材育成にも力を入れており、持続可能なごみ処理問題のエキスパートを輩出していきたいと考えています。

technical term
人材育成 科学的・包括的な視野を持ち、現場を熟知した廃棄物処理のプロフェッショナル育成は本研究室の目標の一つ。