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卒業生コラム

佐川 瞬大

エネルギーにかける夢

JX日鉱日石エネルギー株式会社
研究開発本部 中央技術研究所
燃料研究所
燃料油・バイオ燃料グループ
シニアスタッフ

佐川 瞬大 Shunta Sagawa
[PROFILE]
2006年3月 北海道大学工学部 機械工学科 卒業
2006年4月 北海道大学大学院工学研究科
機械宇宙工学専攻 入学
(宇宙環境応用工学研究室)
2008年3月 北海道大学大学院工学研究科
機械宇宙工学専攻 修了
2008年4月 新日本石油株式会社 入社
(現:JX日鉱日石エネルギー株式会社)
研究開発本部 中央技術研究所に配属

機械屋がエネルギーの世界へ

 F1のメカニックになりたい、そう思って北大機械工学科に入学してから早11年が経ちました。そんなF1のことしか頭になかった機械屋が、なぜエネルギーに興味を持ち、大きく舵を切ったのか……そのきっかけは地球温暖化問題でした。温暖化がもたらす異常気象や農作物への影響を知り、エネルギーに関わる仕事をしたいと思うようになりました。当時はまだ抽象的でしたが、大学で得た設計や力学の知識を活用し、低燃費車両や燃料電池など、省エネ技術で温暖化問題の解決に貢献したいと考えていました。
 貢献手段が省エネ技術から燃料そのものへと変わっていったのは、自分のテーマを持ち、研究を進めていった大学4年生以降です。大学では「DME(ジメチルエーテル)」という燃料からいかに効率良くエネルギーを取り出すか、という研究を行いました。この研究の中で、燃料を変えることができれば、温暖化問題の解決に大きく貢献できるのではないかと感じました。それがエネルギー会社を希望することになった大きなターニングポイントです。

エネルギー会社での研究

図1▲燃料開発に使用する自動車は自分たちで整備します  自動車では燃費、家電は省エネ性能が注目されているように、エネルギーをいかに上手に使うかが求められる時代です。この時代の中で私が担っているのは、自動車用燃料として広く利用されているガソリンや軽油などの研究開発です。ガソリンや軽油は、原油を精製して製造しています。原油は、沸点が常温以下から1000℃以上までの数千種類の炭化水素化合物の集合体です。それらを沸点毎に分け、硫黄などの不純物を取り除き、一部改質したものがガソリンや軽油になります。もちろん、ガソリンや軽油も数百種類の炭化水素化合物の集合体ですから、組成を最適化し、相性の良いエンジンと組み合わせることで、燃費や加速性能などを大きく向上できる可能性があります。JX日鉱日石エネルギーは「ENEOS ヴィーゴ」というプレミアムガソリンを販売していますが、いずれはこれを大きく上回る高性能ガソリンを開発したいと思っています。

工学系の強み

 学生時代に得られた知識は幅広く、様々な場面で役立っています。また、知識そのものだけでなく、その幅の広さから、何を検証すれば(もしくは調べれば)解決できるかを早期に判断できることが工学系の強みだと思います。学生時代の研究において自ら仮説を立て、検証することを繰り返し、さらに様々な教科書や論文で必要な情報を調査した経験は、解決手段の幅を広げる良い機会になりました。

高すぎる理想かもしれないけれど

 米国発のシェールガス革命や東日本大震災に伴う原子力発電の稼働停止、さらには太陽光発電や燃料電池の登場など、エネルギーをとりまく環境は大きく変化しています。いつの日か太陽光や風力などの自然エネルギーだけで生活できる日も来るでしょう。そうなれば、エネルギー利権に端を発する紛争なども無くなると思います。そんな平和な世界が訪れることを目指し、今後もエネルギー問題の解決に取り組んでいきたいと思います。

図2▲北海道大学機械系産業技術フォーラムで発表

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