特集03

岩石やコンクリートの複雑な高速破壊現象
Complex dynamic fracturing phenomena in rocks and concreteblocks

現代物理学は常に更新されるもの。皆さんの力で次代を切り拓いてください。 応用物理学部門 半導体量子工学研究室 教授 武藤 俊一

[PROFILE]
○研究分野/岩盤工学、動的破壊力学、数値解析、X線CT、岩盤斜面の安定性評価
○研究テーマ/岩質材料における3次元複雑き裂進展シミュレーターの構築に関する研究、
マイクロフォーカスX線CTを用いた岩質材料のき裂進展・閉塞挙動に関する研究
○研究室ホームページ
 http://rock.eng.hokudai.ac.jp/

Daisuke Fukuda : Assistant Professor
Laboratory of Rock Mechanics
Division of Sustainable Resources Engineering
○Research field : Rock Engineering, Dynamic Fracture Mechanics,Numerical Analysis, X-ray CT, Assessment of Rock slope Stability
○Research theme : Research on the development of simulation tool for 3-dimensionally complex fracturing process for rock-like materials,Research on crack propagation and crack sealing process in rock-like materials using Micro Focus X-ray CT
○Laboratory HP :
 http://rock.eng.hokudai.ac.jp/

ただ壊すだけなら簡単
「思い通りに壊す」のが難題

 近年、岩盤掘削技術や資源処理のための破砕・粉砕技術において、高速制御破砕技術開発の要求が高まっています。岩石・コンクリートのような岩質材料に対して、発破に代表される高速破砕技術を用いて目的に沿った破砕パターンを得るためには、どのようなプロセスを経て材料が破砕に至るかを理解することが重要です。しかし、高速破砕に伴う破壊現象はマイクロ秒のオーダーで生じ、かつ、岩質材料は不透明材料であるため、高速度カメラ等を用いたとしても材料内部の詳細な破壊現象を観察するのは困難です。また、岩質材料は複雑で不均一な微視構造を持つため、単に同じ現場から採取した岩石といっても、破壊パターンが異なってしまう難しさがあります。岩質材料は身近な材料ではありますが、その破壊機構に関して得られている知見は限られているというのが現状で、思い通りに壊す技術を確立するにはまだまだ研究が必要です。

図1 図1 放電衝撃破砕工法を用いたコンクリート破砕実験の様子 Figure1:Experiment of splitting concrete block using Electric Discharge Impulse Crushing method.

図2 図2 図1の破砕実験を模擬した破壊進展シミュレーション Figure2:Dynamic fracturing process simulation for concrete splitting in Fig.1.

高速破壊現象を可視化
3次元解析ツールの開発も

 上記のような背景から、私は、数値シミュレーションを用いて岩質材料の破壊過程を分析しています。例えば、図1は最近開発された高速破砕工法の一例で、コンクリート内に施した装薬孔に燃焼液を封入し、これを放電衝撃を用いて起爆することで高速に破砕を行う工法の実験結果を示しています。本工法が開発された当時はなぜこのような破断面が形成されたのかわかりませんでした。そこで、図2に示すような本工法を模擬した破壊シミュレーションを行った結果、実験で得られた破砕結果をうまく再現することに成功し、破壊過程を詳細に議論することが可能になりました。高速で取り扱いが難しい現象を可視化できることは非常におもしろいと思います。
 これまでは計算機性能の制約から主に2次元解析を実施してきましたが、近年の計算機能力の急速な向上に伴い、現在は、破壊現象をより詳細に検証するために3次元破壊進展解析ツールの開発に鋭意取り組んでいます。

technical term
高速破砕技術 例えば、火薬類の爆轟(分解反応速度が超音速)、非火薬類の爆燃(分解反応速度が亜音速)、高電圧パルスの放電を用いた破砕法などが研究されている。