工学における先端計測

人間が使う材料として千数百年の歴史を刻む鉄鋼材料は、
大量生産により近代建築や橋梁などの大型構造物を支えてきました。
これに対して、生産量あるいは資源埋蔵量が少ない金属元素は
レアメタルと呼ばれ、近年さまざまな分野から注目を集めています。
なかにはチタンのように、
金属となるまでに特別に高度な技術が必要とされ、
価格的にも工業的な利用が限定されることから
レアメタルと称されるものもあります。
では、この“稀な金属”が今なぜ重要なのでしょうか。
資源に乏しい我が国が生き延びるために必要なレアメタルとは?
今回の特集では、北大工学研究院が
レアメタル研究の最前線にあることを示します。

TALK LOUNGE

〉〉〉 工業界の“ 必須ビタミン”として機能

 周期律表の第6周期と第7周期に位置する希土類元素(レアアース)は、レアメタルの代表です。4f電子軌道と5d電子軌道が交わっている特徴的な電子構造により他の遷移金属にはない機能性を持つことがあり、ある種の合金にごく少量を添加するだけでも魔法のように極めて効果的かつ顕著な特性を発現します。我が国のように高機能材料を戦略的に生産する先進工業国では、希土類元素は必須の工業資源です。わずかでも必要でありかつ高機能であることから、人体に対する必須ビタミンにも例えられます。

〉〉〉 人を支えてきた金属の“レアメタル化”

 金属として歴史の長い金、銀は希少かつ高価な材料として、またその美しさから芸術品としても珍重されてきました。木炭を利用して簡単に製造できる青銅は人類が積極的に生産活動を行った最も古い金属材料ですが、青銅器時代として長く愛用されてきた銅ですら現在では資源の枯渇が懸念され、じきにレアメタルの範疇に入ろうとしています。

(コーディネーター 鈴木 亮輔)