「もの造り」を主眼に置く工学部で行われている研究の中には
生物と密接に関連する分野があります。
身近な例では、病気や怪我の診断にX線やMRI
(核磁気共鳴画像法)装置が用いられていますが、
これらの精密機器も生物の仕組みそのものへの
理解がなければ役に立ちません。
また近年、持続成長可能な化学工業を目指すために、
環境にやさしいグリーンケミストリー・バイオテクノロジーの
活用が叫ばれています。
しかしその実現のためには、多様な生物の仕組みを理解し
活用することが必要不可欠です。
今回の特集では、こうした生物の
仕組みに迫る各研究を紹介します。

TALK LOUNGE

〉〉〉 生物種により異なる多様な仕組み

 生物は、約40億年前に地球に誕生したと考えられています。その後今日まで地球環境の変化に呼応して進化し続けています。多様な生物の設計図は、DNA(デオキシリボ核酸)の塩基であるA、C、G、Tの並びによって書き込まれていますが、ヒトで29億個、大腸菌で400万個と、生物種により数も並び方も異なっています。こうした極めて多様な仕組みを持つと思われる生物の全容解明は容易なことではありません。

〉〉〉 複雑なヒトの解明・微生物の利活用

 特に高等生物であるヒトは複雑な生命現象を営むことから、設計図であるDNAの塩基だけでなく種々の細胞や組織というマクロな観点からの解析も重要になります。そのためには専用の機器や装置の開発も必要です。他方、微生物の設計図は小さく解析も容易で、土壌1グラム中に108個も存在し多様性がある(個々の設計図が異なる)ことから、さまざまな目的に適した仕組みを持つ微生物が「もの造り」に活用されています。

(コーディネーター 大利 徹)