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卒業生コラム

鈴木 淳

革新的な研究テーマを設定、
マネージできる人材を目指して

日本電信電話株式会社 
NTTフォトニクス研究所
先端光エレクトロニクス研究部 研究員

川村 宗範 Sohan Kawamura
[PROFILE]
2009年 北海道大学大学院工学研究科量子理工学専攻
博士後期課程修了
同年 日本電信電話株式会社入社
NTTフォトニクス研究所に配属
現在に至る

材料からデバイスまで

 皆さんは、NTTの研究所というとどんなところを想像するでしょうか。おそらく、通信技術の研究をしているというイメージが大半だと思います。しかし実際には、通信に限らず環境や医療など幅広い分野の研究を行っています。
 私は現在、KTa1-XNbXO3(KTN)という物質の結晶成長、物性研究、そしてデバイスとして世の中に出すという、とても幅広い分野を担当するグループに所属しています。その中で、私の担当しているテーマは、KTN単結晶の量産技術と物性の研究です。このKTNという物質は、電圧をかけると屈折率が非常に大きく変化する性質があり、革新的な光学デバイス材料として医療分野などへの応用が期待されています。下図はNTTが世界で初めて大型化に成功したKTN単結晶と、KTNを使った光スキャナーの性能を比較したものです。
 学生時代は、放射線計測に使う材料の結晶成長とその性能を測定し、社会のどの分野でデバイスとして役立てることができるかという研究をしていました。材料からデバイスまで全体を俯瞰ふかんする「鳥の目」と、細部に注意を払う「虫の目」の両方を持つ必要があることなど、現在の研究との共通点が多くありました。また、企業のインターンシップや共同研究などの機会が多かった経験も大いに役立っています。

図1▲KTN光スキャナーの性能比較 電圧をかけることで屈折率を変化させ光を自在に偏向できるKTN光スキャナー

世界初を体感する楽しさ

図2▲NTTが世界で初めて大型化に成功した光学品質
 KTN単結晶(40mm角×20mm厚)
 世界初を達成すること、何といってもそれが研究の醍醐味です。これまで誰も見たことのない現象や、誰も作ったことのないものを作りあげたときの感動は、病みつきになるほど嬉しいものです。学生時代にこの快感を覚えたことで、今の職業に就いたといっても過言ではありません。
 誰も成しえなかったことを達成するには、大きな困難を幾つも乗り越えなければなりません。相当の忍耐と努力を必要とし、失敗も沢山します。しかし、それを成し遂げたときの感動はいつまでも忘れられないものになり、大きな自信にも繋がります。
 私自身もそうでしたが、研究を始めて間もない学生の皆さんには、地味な作業の連続を退屈と感じる方も多いかと思います。しかし、その先には味わったことのない感動が待っていることを意識して、研究に邁進していただきたいと思います。

自らのアイディアを世の中に

 世界初に魅了されて研究職に就き、現在は入社4年目。企業研究者としてはまだまだ未熟で、試行錯誤の毎日です。思うようにいかないことも多く、大失敗も沢山していますが、まずは研究者として筋肉質になるため、基本をしっかりと身につけながら自分の可能性を広げるため、新しいことに挑戦するよう心がけています。
 材料研究からデバイス開発、そして市場に出すまでを行う弊社では数少ないグループに所属していることに感謝し、様々な経験を積んで1日も早く社会、会社、学会等に貢献できる研究者になりたいと思います。
 将来の目標は自ら研究テーマを設定し、チームを率いて世の中に革新的な製品を出し続けられる人材になることです。目標達成までどのくらいかかるか今は全く想像がつきませんが、自分の研究成果が製品開発につながり、そして世界の市場に受け入れられ、日本のものづくりに貢献するその日を夢見て研究を続けています。

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