多様な産学連携が日本の未来を拓く

「工学って何だろう?」
同じ理系に属する学びでも聞きなじみのある科学とは異なり、
工学は皆さんにとってあまり身近に感じる分野ではないかもしれません。
この問いかけへの答えは、かのレオナルド・ダ・ヴィンチが残した一節
  “経験から生れる認識を工学的といい、
   精神の中に生れて終るそれを科学的と称す。”

が、的を射ています。
科学がいわば抽象化された自然を取り扱う一方で、
工学技術は科学を丸ごと深く豊かに捉え、
不可能を克服しようとするもの、
資源を有しない日本の未来を拓く
新たな技術開発の源となるものです。
本特集では、北海道大学が「第三の使命」として位置づけている
「研究成果の社会還元」を目指すべく、
さまざまな工学分野で進んでいる
〈産学連携〉の取り組みを紹介します。

TALK LOUNGE

〉〉〉 過去の矛盾に見出す新発見

日本の未来を拓く技術革新、と聞くとすぐに新たな知見の発見や新技術の開発が連想されますが、いわゆる〈天才〉の方々の業績を振り返ると、過去の事実の中にある矛盾を発掘し、そこに新たな解釈を見出すたぐいの新発見が多いことに驚かされます。この思考は産学連携においても同様であり、産業界が直面している問題の中に矛盾を見出し、新しい視点での基礎研究分野を創造しようとする大学界と産業界との強固な連携こそが、21世紀の技術革新に重要な役割を担うと期待されています。

〉〉〉 教育、研究に次ぐ「第三の使命」

北海道大学では、産学官連携ポリシーとして『教育と研究という基本使命に加えて、研究成果の社会還元を「第三の使命」として位置づける』指針を掲げ、現在もさまざまな取り組みが進んでいます。どの分野においても、ノーベル化学賞を受賞した鈴木章先生が常に言われる「セレンディピティ」、大小を問わない雑多な問題から学問を建設する姿勢が大切です。ここで紹介する、産業界と連携したセレンディピティな研究を通じて工学の面白みや深みを満喫していただければ幸いです。

(コーディネーター 名和 豊春)

基礎研究の大学と実用化の産業界が進める技術革新