特集07

持続可能エネルギー社会創生の夢にチャレンジ
Challenge for the dream of creating sustainable energy-society

エネルギー環境システム部門
エネルギー変換システム研究室
教授 近久 武美

[PROFILE]

  • ○研究分野/機械工学、熱工学
  • ○研究テーマ/燃料電池、ディーゼル燃焼、社会エネルギーシステム解析
  • ○研究室ホームページ/http://mech-hm.eng.hokudai.ac.jp/~ene-lab/

環境調和型社会に向けて
エネルギーシナリオ解析


図1 共同研究例:マイクロバブルによる船の摩擦低減技術

皆さんは工学を単にモノづくりの学問と捉えていませんか?私は機械工学を専門とする研究者であり、未来のエネルギー変換機として期待されている燃料電池の性能を飛躍的に向上させるための電池内現象の解明研究をしています。将来に貢献する技術研究の一つと自負していますが、このような技術開発研究だけでは世界的な課題である地球環境問題やエネルギー問題は解決できません。

自然エネルギーを利用しながら環境に調和した持続可能社会を築きたいのは皆の願いですが、そのためには経済活動や消費者の行動と結びつけながら、将来技術の望ましい普及に結びつけるための選択肢の明確化が求められます。


図2 共同研究例:機能とデザイン性を考慮した風車と圧力解析

そこで、私は上述した研究以外に、多数のエネルギー技術と経済モデルからなるMARKALMODEL(最適エネルギー構成を求めるために開発されたコンピューターシミュレーションモデル、経済影響等も含む)を用いて、2050年までのエネルギーシナリオ解析を行っています。経済学や政策学研究者およびエネルギー会社や行政と連携しながら、北海道を〈再生可能エネルギーの先進地〉とすると同時に、雇用の拡大にもつなげる活動を行っています。

社会シミュレーションを含め
実社会の要求に応える工学


図3 共同研究例:北大で開発中のCAMUIロケット

機械工学は、おそらく皆さんが考えている以上の奥行きと幅の広さをもった学問分野です。例を挙げると、私と同じ研究分野には船底から微細な気泡を放出し、流体摩擦低減ならびに大幅な燃料消費率の低減を実現している研究者もいれば、手軽に設置できる低騒音風車を開発中の研究者、あるいは極低価格で打ち上げられる小型ロケットを地元北海道の民間会社と共同開発している研究者もいます。

このように工学とは単なるモノづくりだけにとどまらず、様々な社会ニーズに応えるための研究を行おうとするものであり、まさに夢の実現に向かってチャレンジするものです。当然、実社会からの要求に応えようとするものですので、就職についても苦労する事はほとんどありません。こんな素晴らしい学問分野であるにもかかわらず、最近学生から注目が集まらないというのは不思議でなりません。機械工学は上述したように社会シミュレーションさえも守備範囲なのです。こんなに面白い分野に、是非たくさんの学生が参加して欲しいと願っています。


図4 人間協調型ロボットのイメージイラスト
(楡印刷(株)提供、123RF社制作)