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震災の工学特別セミナー
「東日本大震災から学ぶ
─地震、津波の発生から復興計画まで─」の開催

佐伯浩総長による基調講演に対して、学生からの積極的な質疑で盛り上がった▲佐伯浩総長による基調講演に対して、
学生からの積極的な質疑で盛り上がった
 震災の工学特別セミナー「東日本大震災から学ぶ-地震、津波の発生から復興計画まで-」が、7月29日(金)工学部オープンホールで開催され、未曾有の大災害を引き起こした東北地方太平洋沖地震において、実際に何が起こりどのように被害が拡大したのか、また、どのように今後の復興を考えるべきかなど、震災を通して浮き彫りとなった諸問題について、全学の1年生から大学院生までの学生、教職員約150名の参加者が講演者の説明に熱心に耳を傾けました。
 基調講演「東日本大震災からの復興に期待すること-南西沖地震津波からの奥尻の復興から学ぶ-」では、かつて工学部土木工学科教授時代に北海道南西沖地震津波の復興計画策定に尽力された佐伯浩北大総長から、ご自身の津波研究と奥尻の復興にかかわる経験を基に、北海道での津波の歴史、津波避難のあり方、そして地域社会の空洞化及び人口の流出を防ぎ社会を再形成するための義援金の意義と時期の重要性について提言をいただきました。続いて、東日本大震災で発生した一連の現象と被害について、環境フィールド工学部門の石川達也准教授が、今回の地震の発生と伝達のメカニズム、そして地震発生初期に広く報道された地震による地盤の液状化に関わる一連の被害と発生機構について学術的見地から解説、その後、同部門の渡部靖憲准教授、木村一郎准教授から、東北地方の被害調査結果をもとに、津波の発生、海岸地形による局所的な津波の発達機構、また今回被害を顕著に拡大させた川への津波遡上の特徴について説明がありました。これら地震と津波の外力による構造物の被害と損傷メカニズムについては、北方圏環境政策工学部門の佐藤靖彦准教授から、橋梁の被害事例を基に構造物の設計において地震の評価が不十分だった時代の古い構造物にのみ地震による被害が集中している点が指摘され、被災地での調査で判明した津波による橋梁の崩壊メカニズムを適切に反映した構造物設計を早急に策定すべきとの提言がなされました。さらに、一連の甚大な被害を受けた被災地の現況と被災者支援について、環境フィールド工学部門の山田朋人准教授からは、衛星情報、情報インフラを通して避難所、炊き出し場所、浸水場所、道路開通情報など情報ネットワークによる総合的かつ高度な支援体制の下でボランティア活動が集約されている一方で直接被災者との感情のやりとりやボランティア間の連携の難しさなど現場での適応の重要性が指摘されました。最後に、北方圏環境政策工学部門の岸邦宏准教授より、都市計画学の見地から、被災地の調査によって明らかになった避難、防災そして復興計画の考え方について解説があり、避難行動を誘導するための交通システム、復旧を進める上で効果的な方策、今後の復興で住民の立場で考えるべき都市計画について、さらに北海道南西沖地震での復興を例に考慮すべきハードとソフトの津波防災について提言がなされました。
 本セミナーで話題提供された、震災のはじまりから現在検討されている問題、さらにこの国難を乗り越えるためにどう考えていくべきかについて、今後再度予期される津波の来襲に立ち向かわなければならない学生諸君が真剣に考える機会となってくれたのであれば幸いであり、我が国の復興と新たな防災社会の形成へ向けて将来活躍してくれることを心から期待しています。 環境フィールド工学部門 渡部 靖憲
(主催 北海道大学社会基盤防災研究グループの1メンバーとして)

Information

悩みを打ち明けることでストレスを軽減する
工学部にできたカウンセリングルーム

工学系部局なんでも相談室

■平成22年度 相談室利用状況平成22年度 相談室利用状況 現代は、ストレスの時代。ストレスの増加は、こころとからだの両方の不調を引き起こしやすくなります。大学は学生にとって学び研究する現場であり、教職員にとっては働く現場です。それぞれの現場が生き生きとして充実したものになるためには、個々人あるいは現場がストレスをマネージメントしてメンタルヘルスを維持することが大変重要です。
 このため、学生・教職員が足を運びやすいよう平成22年6月にC201室に開設されたのが、工学系部局なんでも相談室です。
 相談室のコンセプトは、とてもシンプルで、相談内容に制限は設けていません。相談者が悩まれているのであれば、どのような件であっても相談可能です。
 通常の精神科や心療内科がある病院等では治療を目的とするため、心的要因の症状が発症していない場合は話を聞いてもらえない場合がありますが、当相談室ではメンタルヘルスを専門とするカウンセラーが、相談者と悩みを共有し、苦しい時には見えにくくなるストレスの原因をしっかりと見据え、軽減・解消する方法を一緒に模索することを目的としているため、相談内容に制限を設ける必要が無く、学生や教職員などどなたでも気軽に利用できるのです。
 メンタルヘルスを維持・向上させるために、「カウンセリング」や「認知行動療法的なアプローチ」を用いてストレスを見定め、その原因を「認知」することはとても重要です。ストレスに対する考え方を改めることで、工学系部局 なんでも相談室気持ちが楽になったり身体の強張りがほぐれるなどの効果があると言われていて、当相談室はまさにこの効果を相談者に促すためにあります。
 では、どんなことがストレスになるのでしょうか。平成22年度に当相談室に来談された方の相談内容を大別すると最も多いのが「健康問題」で37%、次いで「学生生活」が25%、「職場の問題」13%となっています。人によって感じ方や受け止め方はさまざまですが、心身の不調をきっかけにして自分のストレスに向き合うようになったり、それぞれの現場でうまくいかない出来事が契機となる一定のパターンが見えてきます。
 ストレスを自己の問題として対処していく姿勢も大切ですが、第三者に話をしながら問題を見つめ直すこともストレスを変容させる力があります。そのお手伝いをすることが当相談室の役割です。
 相談室の開室日、場所、カウンセラー紹介および予約方法等は全てホームページに掲載しています。興味を持たれた方は、一度アクセスしてみて下さい。 工学系部局なんでも相談室
安全衛生管理室
工学系部局 なんでも相談室