複雑さの中の秩序を探して:複雑ネットワークの数理
Exploring beauty in complex networks
[PROFILE]
○研究分野/応用物理学、複雑系物理学
○研究テーマ/複雑系・フラクタル系の構造とダイナミクス、
臨界性と複雑性
○研究室ホームページ
http://subutu-ap.eng.hokudai.ac.jp/
Kousuke Yakubo : Professor
Laboratory of Condensed Matter Physics
Division of Applied Physics
○Research field : Applied physics, Statistical physics of complex systems
○Research theme : Structure and dynamics in complex and/or fractal systems,
Criticality and complexity
○Laboratory HP :
http://subutu-ap.eng.hokudai.ac.jp/
物事の概念的な理解のために
複雑ネットワークを解析
「計算機を科学技術に応用する」と言ったときに真っ先に思い浮かべるのは、精密で定量的な解析を基に実験を解釈したり、実験では実現困難な状況を作り出してシミュレートしたりすることですが、物事の成り立ちの概念的な理解を助けるためにも計算機は大変重要な役割を果たしています。計算機のそのような利用は実は大変歴史が古く、計算機が科学技術に利用されだした当初から行われていました。特に、扱う対象が複雑になればなるほど、基礎的理解とそれに基づく応用研究における数値解析の重要性は増してきます。
計算機の活躍によりさらに理解が深まっている複雑なシステムに「複雑ネットワーク」があります。ネットワークとは、なんらかの要素(ノード)がなんらかの関係(リンク)で結ばれた系のことで、World Wide Web (WWW)や食物連鎖網のように膨大な数のノードが複雑に結合し合っているものを複雑ネットワークと呼びます。近年はコンピューター・ネットワークの急速な発達により、産業・医療・教育・行政など、あらゆる場面で扱われるデータベース上の情報が相互に関連しあうようになりました。その複雑な相互関係に潜む重要な情報を抽出するために、複雑ネットワークの解析が社会的にも非常に高く注目されています。
一見違って見えるつながり方に
潜在する共通性
このように複雑ネットワークが表す対象は多種多様で、一見何の共通性も無いように思えますが、実はネットワーク構造やその上でのダイナミクスに驚くべき共通性があることが最近の研究によって解ってきました。例えば、あるノードから他のノードへネットワーク上を移動するのに通るリンク数の最小値がノード数に比べて圧倒的に小さいという「スモールワールド性」という性質もその一つです。人間関係のネットワークにこの性質があることは古くから知られていましたが、我々の身の回りのほとんど全ての複雑ネットワークがスモールワールド性を持つことが明らかにされました。私たちの研究室では、複雑ネットワークが有する普遍的な性質をコンピューターを駆使して発見し、これらをいかに利用するかに関する研究を行っています。
フラクタル | 自身の構造とその一部分とが相似である性質。厳密に自己相似でなくても、統計的な意味で相似性を有していればフラクタルと呼ばれる。 |
- 10月号TOPへ
- ◆ハミルトニアンから材料まで
- ◆地球を巡る水の旅と予測可能性
- ◆自動車空力のための非定常乱流シミュレーション
- ◆シミュレーションが解き明かす合金組織のダイナミクス
- ◆複雑さの中の秩序を探して:複雑ネットワークの数理
- ◆学生コラム
◆卒業生コラム - Ring Headlines
- PDFダウンロード 4.7MB