卒業生コラム
未来を予想する仕事国土交通省 |
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[PROFILE]
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「えんじにありんぐ(工学)」
ってなに?
「工学」と聞くと、どんなイメージを抱きますか?私にとっての工学は、「科学的に未来を予想し、その未来に対していろいろなことを行うための学問」です。例えば土木工学であれば、どこどこの港では何年後にはこれぐらいの貨物量が増え、それに対応するためには、どこそこにこんな感じの港をつくって、その港に通じる道路はこれぐらいの幅でどこまでつくって、その道路と高速道路との接続はこうして、そのときの環境への配慮はこうして、ああして……橋はこんな感じの形にして、そのためにはこのように設計して、このように組み立てると……、はい実現!といった感じです。
日本の未来を予想する仕事
現在、私は国土交通省国土政策局に勤務しています。ここでは、国土づくりの方向性を示し、それをすすめる仕事をしています。最近では、平成20年に国土形成計画が策定され、おおむね10年後の日本の方向性が示されました。そして、昨年度(平成22年度)は長期展望を行いました。長期展望では、様々な分野における国土の将来像を科学的に推計し、その結果とともに、そこから考えられる課題を示したものです。
参考:「国土の長期展望」中間とりまとめ
※本文《図表》は一読の価値があると思います。
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/kokudo03_sg_000030.html
北海道大学での経験を活かす
長期展望において、防災と交通の分野を担当しました。例えば防災の分野では、委員会の先生や上司の助言をいただきながら、将来の地震の発生確率の高いエリアに住む高齢者数を推計しました。その結果、2010年は約198万人であるのに対し、2050年には約316万人と約60%近く増加することが明らかとなりました。推計結果を出すまでのプロセスとしては、関連データを入手し、集計を行い、結果を分かりやすく表現する等の作業があり、これをいかに効率良く、手早く行うかが大切です。
このような仕事の背景として、北海道大学大学院で学んださまざまな経験が非常に活かされています。今回紹介した推計結果は、平成23年1月17日(阪神大震災発生の16年目にあたる日)のNHKニュースで放映されました。
最後に・・・
北海道大学大学院在学中には、学問だけでなく、沢山の素晴らしい先生や友人にも恵まれました。大学院を修了して10年が経とうとしていますが、今でも付き合いが続いています。当時の工学研究科は留学生も多かったため、留学生と人生観について語り合ったり、一緒に日本国内を旅行したり、母国の手料理をいただいたりと、国際的な交流も行うことができました。留学生が帰国した後もこの交流は続いており、今でも海外へ行った折には懐かしい友を訪ねています。最近では、東日本大震災発生の数時間後に、遠く離れた国から安否確認の連絡がありました。「お手伝いできることがあれば何でもする」という彼らの優しさに大変感動したものです。
北海道大学大学院は、沢山のことを学び、沢山のかけがえのない経験をした貴重な場所でした。みなさんも、多かれ少なかれ夢をお持ちかと思います。いろいろなことができる北海道大学大学院で、ぜひその夢に向けて、自分の未来を予想し、そして実現させてみてはいかがでしょうか。
※上記の内容は、平成23年9月に執筆いただいたものであり、執筆者の鈴木さんは現在、独立行政法人国際協力機構で勤務されています。