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低炭素社会実現への挑戦

佐々木教授

社会が抱える不安解消を目指して。
原子力施設をめぐる安心の標準化づくり。

人間機械システムデザイン部門
マイクロエネルギーシステム研究室
教授

佐々木 克彦 Katsuhiko Sasaki
[PROFILE]
◎研究分野/計算力学,材料力学
◎研究テーマ/高熱伝導複合材料の開発、
超高密度電子実装基板の熱変形解析など
◎研究室ホームページ/http://mech-me.eng.hokudai.ac.jp/~cool/

変形シミュレーションを使って
原発配管のダメージを評価

 政府は、低炭素社会実現のための一つの方策として、原子力発電施設の増設目標を打ち出しました。しかし、原子力発電施設の十分な耐震性への裏付けがなければ、この計画の実現は不可能です。原子力発電施設内で耐震性に最も気をつけなければならない機器の一つに配管が有ります。配管からの蒸気などの漏れは重大事故につながる危険性が有ります。
 そこで、地殻の震動をもとに計算された原子力建家の震動波形を用いて、配管が地震によりどの程度変形し、その変形により配管がダメージを受けるか否かについてのコンピュータシミュレーションを行っています(図1)。また、地震を受けた場合を想定して、配管が受けたダメージを現場で素早く評価する方法を検討しています。例えば、材料が変形を受けると材料上面に凹凸が現れます。この凹凸の大きさを現場で測定することにより実際の配管のダメージの程度を比較的早く知ることができる手法を考案しています。

図1 配管の変形シミュレーション
図1 配管の変形シミュレーション

低炭素社会に有用な
高熱伝導複合材料の開発も

 私の研究室では、原子力の他にも低炭素社会を実現するために有用な方法を探っています。そのキーワードとは「エネルギーをいかに効率良く使うか?」。そこでエネルギー機器に多用されている熱交換器や、小型化高密度化により発熱が問題になっている電子機器の放熱板などに着目して、これらの熱効率を上げるべく高熱伝導複合材料の開発に取り組んでいます(図2)。
 この高熱伝導複合材料は、高機能材料として注目され、熱伝導率が大変高いカーボンナノチューブの一種である炭素繊維を軽くて強い材料であるアルミニウムに混ぜることにより作られます。低炭素社会実現のために炭素を利用するという皮肉っぽい研究ですが、現在、アルミニウムの3倍程度の熱伝導率を持つところまでに開発が進んでいます。今後、アルミニウム以外の材料を用いてさまざまな用途に対応出来る高熱伝導材料の開発を予定しています。

図2 高熱伝導複合材料
図2 高熱伝導複合材料

technical term
変形シミュレーション 原子力発電施設に作用する地震動と数値解析手法の一つである有限要素法を用いて、配管がどのように変動し変形するかを予測すること。