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宇宙環境を利用した工学研究 -未来の有人宇宙活動を支える-
R&D under Space Environment
- For supporting future frequent manned activities in space -

藤田教授・中村准教授

地上から宇宙へ。火災安全性を確保し、
我々の活動領域を広げる人類への貢献が目標です。

機械宇宙工学部門
宇宙環境応用工学研究室

 教授 藤田 修 (左)
准教授 中村 祐二 (右)
[PROFILE]
◎研究分野/宇宙環境利用工学、燃焼学
◎研究テーマ/宇宙火災安全性研究、減圧環境下での火災物理、
 CO2抑制のための高効率燃焼、燃焼によるカーボンナノチューブ合成
◎研究室ホームページ/http://york-me.eng.hokudai.ac.jp/
Osamu Fujita:Professor (left),Yuji Nakamura:Associate Professor (right)

Laboratory of Space Utilization(LSU)Division of Mechanical and Space Engineering

◎Research field:Space Utilization Engineering,Combustion Science
◎Research theme:Fire safety in space, Fire physics in reduced pressure,
 High efficiency combustion, Flame synthesis of CNT
◎Laboratory HP:http://york-me.eng.hokudai.ac.jp/

一般人の宇宙飛行も視野に
無重力閉鎖空間の火災安全を研究

 あなたも宇宙にゆきたいと思いませんか?近い将来、一般の人にも宇宙飛行が普通のことになるかもしれません。私たちは、このような時代が到来したときに必要な技術について考えています。その中で特に重要と考え、現在、主に取り組んでいる課題が、「宇宙火災安全」の問題です。一度、人類が宇宙に飛び出すと、人間は無重力場での閉鎖空間で生活しなければなりません。これは、月面基地や火星基地においても同じです。このような場で火災が起こった時、逃げ場はなく、消防車も来てくれません。従って、絶対火災を起こすことはできませんし、小火が起こった時には、素早く検知して消し止める技術が重要なのです。

国際宇宙ステーションで
火災の発生リスクを検証

 火災が起こらないようにするには、どうすれば良いのでしょう。それは、火災が発生する条件を明らかにし、その条件が実現しないようにすることなのです。例えば、電線がショートしたとします(宇宙船内では電気系統の発火が主な火災発生源です)。このとき、火がつくかどうかは、電線に流れた電流値と周囲の酸素濃度で決定されます。私たちの過去の研究でわかったことは、この火災発生限界条件が無重力になると大幅に拡大することです。つまり、火災の発生リスクが高まります。もう一つ火災抑制に対し大事なのは、現在火がついている状態から、周囲の酸素濃度をどこまで下げると火が消えるかという点です。これは、小火が仮に生じた時に、消火剤(宇宙船内ではCO2ガス)で酸素濃度をどこまで下げれば火災が消し止められるかという点に対し答えを与えるものになります。
 これらの問題は大変重要なので、北大機械宇宙工学部門(機械知能工学科)が中心となって、本当の限界条件がどこにあるのかを、ISS(国際宇宙ステーション)を利用して明らかにする研究が進んでいます(図1)。さらに、ここで取得したデータをもとに、NASA(米国航空宇宙局)を含めた国際的な研究グループで、より安全性の高い火災基準の構築や火災抑制技術の検討を進める計画になっています。この研究は、長期に渡り継続する見込みです。皆さんも、是非私たちの研究チームに入ってください。

図1 ISS火災安全性実験に向けた装置開発
図1 ISS火災安全性実験に向けた装置開発 Figure 1:Development of experimental setup for combustion research in ISS.

technical term
火災発生
限界条件
可能性材料が発火し、その炎が自律的に拡がるための限界条件。
無重力場におけるこの限界条件は、まだ明らかにされていない。