先端医療を支える工学  ー工学研究の対象は医のフィールドへー Medical Technology

これまでにないスピードで少子高齢化が進んでいるわが国は、世界一の長寿国です。健康寿命が年々伸びていることを喜ぶ一方で、誰もが健康で安心して暮らせる質の高い生活を実現するための技術開発は、工学研究の大きな目標です。医療分野においても、バイオテクノロジーの応用による新薬の開発や再生医療のみならず、先端技術を応用した高度医療機器の開発が極めて重要です。工学と医学とを連携した研究により、はじめてこれらの機器が実現します。ここでは医工連携の先例となる先端医療の工学研究を紹介します。

検査・診断、治療…望まれる先端医療に欠かせない工学研究

〉〉検査・診断を可能にするヒトを測る機器

 病院に行ってまず驚くのは、実に多くの診断・治療機器(機械)があることです。医療における検査・診断とは、ヒトの機能を測定することから始まります。今では、MRIやX線CT、超音波診断装置などによって、体の中を縦横無尽に立体的に視ることができます。また、臓器の内部は内視鏡で直接観察できます。心電計、脳波計、血圧計、血液分析装置などもあります。これらの機器の出現によって病気の検査や診断が飛躍的に進歩しいます。このような機器の開発には、ヒトの機能や形を計測するための先進的な工学的基礎研究が行われています。

〉〉基礎研究に支えられたヒトを治す機器

 病気を治すときは治療機器の出番になります。手術室には人工呼吸器、麻酔器から電気メスまで、多くの機器に取り囲まれ、さながら工場のようです。また、がんに対する放射線治療機やレーザー治療器といった先端治療器も多くあります。これらの機器の開発にも、多くの工学的基礎研究が必要になります。工学研究のまなざしで医療を見つめる、まさしく医工連携の研究で新たな治療が実現するわけです。

(コーディネーター 但野 茂)