特集 1-知恵と多様性の翼で羽ばたく工学研究者に-

特集 工学研究院長・工学院長・工学部長 名和豊春教授を囲む学生座談会

スケジュール管理は自分次第
苦しいときは仲間がいる

小出 修士課程に進学すると、どういうタイムスケジュールになりますか?研究室の先輩たちから「忙しくなるよ」と聞いて、少し不安を感じています。

古川 私の研究室はコアタイムがなく、ただし安全性を考慮して実験は夜8時までと決まっています。そこから夜勤のアルバイトに行き、朝帰宅して寝て、また大学へ、というサイクルです。

山崎 僕の研究室もスケジュール管理は本人に委ねられています。だからといってサボッてしまうと、単純に自分があとあと困ることになる。自分なりに計画を立てて取り組んでいます。実験の時間を作りたくて、大学院に入ってからはアルバイトはしていません。

鈴木 僕は朝6時から9時までのアルバイトを終えてから大学に向かいます。その日どれだけ研究に時間を費やすかは、研究内容にもよると思います。実験で反応を待つ場合は結果が出るまでの時間がかかるでしょうし、フィールドで得た実測データを整理するような内容ならば、区切りをつけ次第帰ることができる。事前に計画を立てておけば、大学以外の予定も希望どおりにこなすことができます。

小出 私がこれからやろうとしている研究テーマは汚染した河川の自然浄化で、自然のサンプリングを取り扱うので「実験の前処理に時間がかかって大変だよ」という話も先輩から聞いています。大学院に進んでもできればアルバイトを続けたいですし、海外インターンシップにも参加したい。去年初めてベトナムに行き、いろいろな国に行きたいという思いが強くなりました。時間をうまくつくれるか、心配です。

名和 小出さんの不安もわかりますが、研究室には仲間がいるから大丈夫。学生たちを見ていると、互いに実験を手伝ったり、実験が終わった後もいろいろな話で盛り上がったりして、皆で楽しく過ごしているようです。私が北大生だった頃は、先生が怖くて近寄りがたい時代(笑)。先生の指導を受けながら、先輩も後輩も一緒になって一喜一憂し“同じ釜の飯を食う”仲間として団結した思い出があります。現在、私が指導している学生の間では、彼らが主体的に始めた学生ゼミも盛んに行われています。小出さんの研究も、苦しいときはきっと周囲がサポートしてくれると思います。
それから、やりたいことにあげていた海外インターンシップは、北海道大学としておおいに推奨しています。工学系教育研究センター(CEED)の教育プログラムなどバックアップ制度もあるので、ぜひ活用してください。

ことばは伝えるためのツール
“中身”である自分を磨こう

川﨑 大学院では、どれくらいの英語力が必要になりますか?

鈴木 学会用に自分の研究内容を短く英語でまとめたとき、基本的な英語力プラス、専門用語がわかる語彙力の必要性を痛感しました。

古川 英語の論文を読むのにはじめは時間がかかりましたが、読む進めるうちにだんだん慣れてきて後半はスムーズに。1本論文を読み終えると、2本目はより楽に読めるようになりました。

山崎 ペラペラに話せるわけではありませんが、研究室に留学生がいて、自分のつたない英語でも実践で話せる機会があるのはいい勉強になっていると思います。

司会 本学院では早くから英語特別コース(e3)を設けており、全て英語による質の高い教育を提供するプログラムが昨年15周年を迎えました。日本人の学生も受講できるので、日常的に英語を話して聞く環境を存分に活用してほしいですね。

名和 今後は1研究室に1人留学生がいる時代も、そう遠くはないと感じています。実践的かつ専門的な英語教育の環境を整備していきたいです。  
それから、英語教育に関して皆さんにぜひとも理解してほしいことがひとつあります。それは、英語と同じくらいに日本語の力も磨く必要があるということです。私が担当する授業で小論文テストを重視する理由も、そこにあります。約2000字の長文を構成や論旨を整理せずにただ漫然と書き進めていくと、最初と最後の主張が食い違う、なんていうことも少なくありません。
もう何十年も前の話になりますが、海外の学会で発表したときのことです。決して流暢な英語ではありませんでしたが、発表後、大勢の研究者が質問に来てくれました。彼ら曰く「英語力はともかく、あなたがやっている研究内容に興味がある」とのこと。伝えたい内容をきちんと届けることができたと、安堵した記憶が残っています。ことばはツールです。大切なのは、その中身。人としての感性や教養を磨き、研究者として論理的な思考や表現力を高めていく。それらをアウトプットするためのツールが日本語であり、英語であるということを忘れないでくださいね。

異文化に触れる楽しさを知る
外向き思考の北大生

司会 先ほど海外インターンシップの話が出ましたが、他に海外経験がある方は?

眞下 大学で海外研究プログラムを見つけて、イギリスとフィンランドに行ってきました。

川﨑 大学1年のときに、ひとりで30日間タイに行きました。滞在中に現地で内紛があり、「今、クラッカーの音がした?」と思ったら実は銃声だったということもありました。

全員 ええっ?

司会 大丈夫でしたか?

川﨑 幸い、僕自身が危ない目にあうことはありませんでしたが、そうやって生死に関わるような事態が身近にある現地と、平和な日本との強烈な違いを実感することができました。僕は海外に限らず旅行が大好きなので、2年連続で北海道から東京までヒッチハイクで帰省したこともあります。太平洋まわりと日本海まわり。日本海、特に青森の方々はやさしかったです。日本の中でも行ったことのない土地で異文化に触れることができますし、自分が実体験で見聞きしたからこそ、日本の文化を海外の人にも伝えることができるんじゃないか。そう思って、次の夢は行ったことがない関西旅行です。もっと日本のことが知りたいです。

司会 外向き思考の北大生たち、頼もしいかぎりですね。それでは最後に今日の感想を一人ずつ聞かせてください。

眞下 研究院長のお話を直接聞かせていただける機会に立ち会えて、とても楽しかったです。同じ学部生である川﨑さんの旅行話もすごく刺激になりました。自分もひとり旅をしてみたいです。

川﨑 僕のほうこそ、皆さんの話から元気をいただきました。大学院に進学して、専門知識や見聞を広げていきたいです。

小出 私も将来に向けて、自分自身を豊かにすることの大切さを実感できました。

古川 皆さんの海外インターンシップや旅行の話を聞いて、もっと積極的に行動したいと思えるようになりました。

鈴木 大勢が集まる座談会にはじめは緊張していましたが、名和先生の気さくなお人柄のおかげでリラックスできました。僕も海外に行ってみたくなりました。

山崎 学生のうちにこういう座談会に参加できて、とても貴重な経験になりました。学部生の皆さんがとてもしっかりしていて、こちらも身が引き締まる思いでした。

名和 皆さん、あらためまして本日は本当にありがとうございました。学生の皆さんが日頃どういうことを考えているのかを聞かせていただく場にしたいと思っていましたが、こちらの期待以上の、等身大の思いを聞かせていただくことができました。今日うかがった皆さんの思いを、今後の工学研究院・工学院・工学部の教育・研究活動に反映させていきたいです。
今期から引き続き研究院長を務めるにあたり、私は「対話」を大切にしたいと考えています。職員との対話、教員との対話、そして皆さん学生との対話を大事にする、face to faceの精神です。なにかあったら研究院長室の扉を気軽にノックしてください。扉は皆さんのために開いています。

司会 本日はありがとうございました。

(平成28年2月18日実施)

学生たちは6人全員が初対面。徐々に打ち解け、ときに笑いも起こるほどに。
▲ 学生たちは6人全員が初対面。徐々に打ち解け、ときに笑いも起こるほどに。
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