特集04

土の変形の測定:ミクロの世界から崩壊・流動まで
Measuring soil's deformation : From micro-level deformation to failure

土の変形の計測精度を高め、土木建設技術の底上げに貢献したい。 環境フィールド工学部門 地盤物性学研究室 准教授 西村 聡

[PROFILE]
○研究分野/土質力学、地盤工学
○研究テーマ/地盤の強度・変形特性の精密測定・定量化、地盤改良
○研究室ホームページ
 http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/soilmech/

Satoshi Nishimura : Associate Professor
Laboratory of Soil Mechanics
Division of Field Engineering for the Environment
○Research field : Soil mechanics, Geotechnical engineering
○Research theme : Research themes: Precise characterisation of soils' strength and stiffness, ground improvement
○Laboratory HP :
 http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/soilmech/index_en.html

土の剛性は非線形・異方的
0.001%のひずみで変形

 土の変形特性に着目する際、ゴムや金属などの物質と大きく異なる点は、強い非線形性と異方性です。つまり、剛性が変形の大きさと、荷重がかかる方向によって大きく異なってくるということです。土には剛性非線形性があり、ひずみが0.001%程度という非常に小さい変形レベルから次第に剛性の減少が始まります。トンネル掘削のように0.01〜0.1%範囲の変形から、軟弱地盤上の堤防の沈下のように10〜100%範囲の変形まで幅広い地盤の変形・安定性を解析・予測するには、これらに対応する全てのひずみレベルで剛性を正確に知る必要があります。
 また、現地では様々な方向から複雑な形態で土に負荷がかかるので、実験室でも様々な方向から力をかけて変形を再現して異方性を調査しないといけません。

実験室で土の変形を計測
誤差を回避し精確に記述

 実験室で試験できる供試体はせいぜい100mmくらいの大きさなので、ひずみ0.001%というと、0.001mmの変位を測定する必要があります。私達の実験室では、三軸試験や圧密試験という従来の試験装置に高精度センサーと弾性波速度測定を組み合わせたシステムを導入したり(図1)、デジタルカメラを用いた画像解析に特殊なアルゴリズムを組み込んだりして、これに挑戦しています(図2)。
 これらにより、従来の試験方法に必然的に現れる計測誤差を回避し、同時に、微小変形時の土の変形特性を完全に記述する数学モデルとその係数を全て同定することに成功しました。
 また、センサーの切り替えや、一貫した画像解析の適用により、同じシステム・同じ供試体で、供試体がひしゃげるくらいの非常に大きな変形まで追随測定できるようにしています。室内土質試験の精度では私達の実験室はすでに世界有数と自負していますが、システムの完成度をさらに高めるべく、技術・ノウハウの研鑚に努めています。

図1 図1 高精度センサーと弾性波速度測定装置による異方剛性の非破壊測定システム Figure1:Non-destructive measurement system for anisotropic stiffness with high-precision sensors and elastic wave velocity measuring devices.

図2 図2 画像解析による土の圧縮の測定システム:サブピクセルPIV解析により、3×10-4mmの精度をもつ Figure2:Soil compressibility measuring system based on image analysis:
A subpixel PIV algorithm allows the precision of 3×10-4mm.

technical term
剛性非線形性 土において、ひずみが0.001%程度の微小レベルを超えて変形すると、剛性がひずみに応じて減少していく性質を剛性非線形性という。