視えない情報を可視化する ~加速器中性子源の応用
Visualize the invisible information ~ Application of accelerator neutron source
[PROFILE]
○研究分野/中性子工学、中性子科学
○研究テーマ/大型~小型加速器中性子源用の測定手法・装置開発、材料の中性子散乱実験
○研究室ホームページ
http://toybox.qe.eng.hokudai.ac.jp/
Takashi Kamiyama : Associate Professor
Laboratory of Quantum Beam System Engineering
Division of Quantum Science and Engineering
○Research field : Neutron science and engineering
○Research theme : Instrumental development for the compact to large accelerator neutron source, Neutron scattering experiment of materials
○Laboratory HP :
http://toybox.qe.eng.hokudai.ac.jp/index_eng.html
北大工学部の加速器が
世界の中性子研究を牽引
自然科学探求の先端的ツールである加速器で作る粒子の一つ、中性子は、現在物質研究や医療への応用が進められ、世界中で大小の加速器中性子源が建設されています。そのような中、北大工学部が持つコンパクトな45MeV電子線形加速器(図1)は、加速器を使った中性子源の実験的な研究の場として、30年以上前から多くの成果を発信し続けてきました。
この加速器が発信してきた北大発のユニークなアイディアや技術は、現在も世界中の中性子研究を牽引し支えています。このため、国内外の研究者が北大へ加速器を利用しに来ますし、同時に私たちも大型加速器施設を利用するために世界中の研究施設へと出かけています。工学部の加速器はこのような世界的研究交流のチェーンの一つの環として重要な役割を担っている施設なのです。
イメージング手法にも活用し
新たな計測アイディアを創出
北大発で最近注目されている研究の一つに、中性子による非破壊イメージングが挙げられます。例えば、物体の内部温度測定では温度センサーの設置が必須ですが、我々は加速器中性子とCT法を組み合わせ、物体内部の温度分布を中性子により可視化する手法を開発しました(図2)。これは、中性子の吸収エネルギーが原子核の運動によりわずかに変わることから、吸収ピーク幅を解析して原子運動のエネルギーの大きさ即ち温度に換算するものです。つまり、原子1個1個がセンサーとなる最も直接的な温度計といえるでしょう。
また、結晶構造の解析に適したエネルギーの中性子が物質を透過する際の透過スペクトルを場所ごとに解析することで、結晶構造、結晶の向き、結晶子の大きさ、歪などの分布を物体上にマッピングするのも、北大発の新しい手法です。さまざまな現象の直感的な理解に役立つこれらのイメージング手法は強く期待されている計測法の一つであり、北大は加速器中性子を利用する新しいイメージング法の展開で世界の先端に位置しています。今後ともこの手法の展開を図るとともに、加速器中性子源を持つという強みを活かした新しい計測アイディアの創出を目指していきたいと考えています。
中性子 | 電気を帯びてない10-15mくらいの粒子。中性子が物質中の原子核や磁場によって散乱する様を観察することで物質構造を調べる。 |