特集04

高度電子部品・触媒に用いられる新しいナノ粒子と
そのグリーン合成法
Novel nanoparticles and their green synthetic process for electronic parts and catalysts

材料科学部門 表界面微細構造研究室 教授 米澤 徹

[PROFILE]
○研究分野/ナノ材料、電子顕微鏡、有機無機複合体
○研究テーマ/ナノ粒子合成・構造・物性、新しい電子顕微鏡観察法、
 ナノ材料を用いる新しい質量分析法、金属と有機物のヘテロ界面制御
○研究室ホームページ
 http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/lims/

Tetsu Yonezawa : Professor
Laboratory of Interface and Materials Surface
Division of Materials Science and Engineering
○Research field : Nanomaterials, Electron Microscopy, Organic-Inorganic Composites
○Research theme : Synthesis, Structure, Properties of Nanoparticles, New Method for Electron Microscopic Observation,
○Laboratory HP :
 http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/lims/

銅配線から直接印刷へ
酸化しづらい銅ナノ粒子も合成

 コンピュータや携帯電話の中は非常に小さな電子部品が細い回路でつながっています。この回路には銅配線が使われていますが、これを印刷に代えることができれば、メッキ用薬剤、銅の使用量を減らすとともに、銅イオンを含む廃液の大幅削減によるコストと環境負荷の両方の低減が期待されます。また、この電子部品の中に積層セラミックスコンデンサ(MLCC)というコンデンサが多数含まれており、このコンデンサ用の内部の電極材料には現在ニッケルが使用されています。それをより導電性が優れた銅に代えようという研究も行っています。これらを実現するためには、まず酸化していない銅ナノ粒子を大量に、かつ簡単に合成する必要があります。しかし、銅ナノ粒子はそのまま空気中に置いておくと酸化してしまいます。そこで、ゼラチンを表面にコートしたところ、酸化されにくい銅ナノ粒子を合成することができました(図1)。これらを印刷用のペーストにして、コンデンサの電極などへ利用しています。

環境にやさしいナノ材料
作り方もグリーンに

 ナノ材料は様々な分野に用いられ始めてていますが、その大量合成法はそれほど多く提案されていません。私たちは、金属の棒もしくは金属塩と水からの貴金属ナノ粒子合成を可能とし、金属酸化物ナノ粒子の合成にも成功しました。これらの合成反応にはマイクロ波を使い、反応液中でプラズマを発生させて用いています。プラズマとは、分子がバラバラになり、分子の中の電子が外に飛び出したエネルギーの強い状態で、多くの場合、強い光を放ちます(図2)。このとき、電極から金属が飛び出したり、貴金属のイオンが還元されたり、遷移金属の酸化物が形成されます。そして、プラズマの周りにある水によって急速に冷やされ、ナノ粒子化します。この方法では金属源と水から燃料電池用白金触媒や有機合成用触媒の大量合成が可能になり、さらには、透明電極などに利用される金属酸化物ナノ粒子も高速・大量に合成できるようになりました。これからは、材料そのものだけではなく、その生産の工程においても、グリーン対応が可能となるのです。

図1 粒径の異なる銅ナノ粒子材料 Figure 1 : Copper nanoparticles with various sizes

図2 液中プラズマの発生時の写真 Figure 2 : Photographs of the electrodes at plasma ignition.

technical term
ナノ材料 ナノとは10-9のこと。ナノ材料は、ある1つの次元が100ナノメートル以下の材料をさす。たとえば、ナノロッドであれば、短径が100nm以下である。