半導体技術で触媒を作り、化学反応を制御する
Create catalysts by lithography
[PROFILE]
○研究分野/表面構造科学
○研究テーマ/表面顕微、表面分光法、非金属表面の触媒作用
○研究室ホームページ
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~q16691/index.html
Kiyotaka Asakura : Professor
Surface Structure Chemistry Division
Catalysis Research Center
(Division of Quantum Science and Engineering)
○Research field : Surface Structure Science
○Research theme : Surface Micro and Spectroscopy,Structure and Catalysis of Nonmetal Solid Surface
○Laboratory HP :
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~q16691/index.html
グリーンイノベーションに
貢献する選択酸化触媒
触媒は、効率的なエネルギー変換、物質合成を行い、人類の持続的発展を実現するグリーンイノベーションには不可欠な物質です。たとえば、有機物である安定な炭化水素をプラスチックの材料に変化させることもできます。家庭用のガスボンベに使われるプロパンガスやプロペンガスをアクリル繊維や合成樹脂の原料となるアクリロニトリルに変える触媒として、VSbO4(酸化バナジウムアンチモン)があります。この反応には、次の化学反応式からわかるように酸素が必要です。普通に反応を起こさせると、(1)のように完全に燃焼します。
C3H6+15/2O2+NH3→3CO2+9/2H2O+1/2N2 ……(1)
C3H6+3/2O2+NH3→CH2=CH-CN+3H2O ……(2)
この(1)を抑え、(2)の選択性を上げるのが、VSbO4の役割です。こうした触媒で、高い選択性を示す要因の一つに「リモートコントロール機構」という考えがあります。
リソグラフィー法で目指す
最大活性・最大選択性
解離したばかりの酸素はとにかく活性であるため、触媒が介在しない場合、(1)の反応が進行します。一方、同じ酸素でも触媒に含まれる酸素は、目的とする化合物を作りやすくする「選択性が高い酸素」と考えられています。しかし、触媒に含まれる酸素は無尽蔵でないため、どこからか酸素が供給されなければなりません。そこで、図1に示すように酸素を解離して、触媒の中の酸素を生み出す場所と触媒中の酸素を使ってプロペンを活性化する場所を別々に作り、その間で酸素を拡散させて、高い活性と選択性を実現しようという考えがリモートコントロール機構です。この考え方が正しければ、この2つの性質の異なる場所の大きさや間隔を制御して、酸素の拡散と反応とのバランスをとることで、最大活性・最大選択性を得ることができるはずです。そこで、平坦なSi基板上に電子回路を描ける電子線リソグラフィーにより表面の触媒の形を設計して作ってみたところ(図2)、間隔や大きさが適当なときに高い活性、選択性を示すデータを取ることができました(図3)。今後さらに詳細な検討が必要ですが、触媒と半導体という異次元の世界の技術を融合することで新しい化学反応のコントロールの道が開けたと考えています。
触媒 | 化学反応を促すサイクルを形成し、消費・再生を繰り返す物質。反応に必要な活性化エネルギーを小さくし、反応速度を大きくする。 |
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