結晶性物質の新しい秩序を求めて
Pursuit of a new order in crystalline materials
[PROFILE]
○研究分野/結晶物理工学、回折結晶学
○研究テーマ/非周期結晶構造解析、準結晶と構造複雑合金結晶の結晶成長
○研究室ホームページ
http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/crystal/
Hiroyuki Takakura : Associate Professor
Laboratory of Crystal Physics
Division of Applied Physics
○Research field : Crystal Physics, Diffraction crystallography
○Research theme : Structure Analysis of Aperiodic Crystals,
Crystal Growth of Quasicrystals and Complex metallic alloy crystals
○Laboratory HP :
http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/crystal/
結晶でもアモルファスでもない
第三の固体状態「準結晶」
固体は大きく分けて、結晶とアモルファス(非晶質)に分類されます。一般にイメージされる結晶といえば、食塩やダイヤモンド、水晶など。原子や分子の集合をひとつの構造単位とし、空間的な繰り返しのパターンを持つ「周期性」のもとに配列したものと考えられてきました。いろいろな結晶性物質が現代の科学技術を支えており、たとえば、半導体は結晶に意図的に欠陥を導入して、結晶が持つ「電気の通しやすさ」に周囲の電場や温度によって敏感に変化するという性質を獲得させたものです。一方、アモルファスの代表的な応用例は窓ガラス。原子が無秩序に集合している構造が、様々な場面で活用されています。
そして、我々が取り扱う「準結晶」とは通常の結晶ではありません。前述の周期性がなく、代わりに「準周期性」という新しい構造秩序を持ちます。さらに、準結晶は普通の結晶では許されない、5、8、10、12回対称性を示します(図1)。近年の材料研究では、従来の物質設計概念を超える新規物質の出現が望まれています。準結晶は、通常の結晶では見られない性質が期待される新しい固体なのです。
高次元結晶として理解し
新たな構造を明らかに
準結晶は周期性を持たないため、長い間その原子配列の詳細が謎のままでした。我々の研究室では、準結晶を高次元で周期性を持つ高次元結晶として取り扱うことにより、世界で初めて、Yb-Cd2元素準結晶の構造の詳細を明らかにしました(図2)。これにより近年、他の同型構造を持つ準結晶や、近似結晶と呼ばれる構造の複雑な結晶と準結晶の関係の理解が格段に進みました。
準周期性は物質に新しい性質を発現させます。電気が流れやすいアルミニウムや銅、鉄を混ぜ合わせると、電気を通しにくい金属、準結晶ができます。しかし、準周期性を制御して有用な性質を得る段階に至るには、まだまだ分からないことばかりです。当研究室では、準結晶や近似結晶の単結晶の結晶育成にも取り組んでいます。高品質単結晶を得ることにより、準結晶特有の物性を追及するとともに、将来的には、準周期性を基軸とした非周期結晶工学を新たに創成していきたいと考えています。
準周期性 | 結晶の持つ周期性とは異なり、準結晶にのみ見られる構造秩序。準結晶解明の足がかりとなる重要な特性。 |