特集・研究紹介

工学研究院・工学院の
先駆的な技術を発信します。

No.434 2024年04月号

工学を学ぼう

特集 08

食品から化粧品、泥・マグマの流動まで Applications to a broad field of food, cosmetics, mud, and magma flows

「レオロジー物性を評価する流速分布計測支援型レオメータは円筒内の試験流体にせん断変形を与え、超音波流速分布計によって時空間流速分布を計測します」

コーヒーカップに見る不思議な流体力学の世界

エネルギー環境システム専攻 流れ制御研究室 2024年3月博士後期課程 修了 JSPS特別研究員PD
大家 広平

[PROFILE]

出身高校
旭川工業高等専門学校
研究分野
流体力学、レオロジー
研究テーマ
複雑流体のレオロジー計測技術の開発と応用

身近な流動現象が数式に

学部3年のときの講義がきっかけでした。コーヒーカップをかき混ぜて暫く放っておくと、流れが静止状態に戻るのはなぜなのか?身近な流動現象が実は数式で説明できることを知り、流体力学の魅力の一端に触れた瞬間でした。それから今の研究室に入り、先人達が築いてきた知見と技術を学んでいます。そこに自身のアイデアを盛り込んで新たな価値を創造し、試行錯誤の上に目標を達成できた時の喜びが、研究活動の醍醐味です。

複雑流体の流れ制御を目指して

食品や化粧品など身の回りの多くの流体は、変形速度に応じて粘度が変化する複雑な性質を持ちます。この性質を扱う学問レオロジーは、多様な食感や塗り心地の制御、泥やマグマの流動の理解に必須となります。ところが、気泡・液滴・粒子を含む流体を扱うための効果的なレオロジー計測技術はいまだ存在せず、複数の研究者と協力して開発を進めてきました。この新技術を基盤に、医療・食品、化学工業や地球惑星科学など、複雑流体に関する様々な重要課題の解決に挑んでいます。

図1 レオロジー計測が難しい複雑流体の代表例 Figure 1 : Typical examples of complex fluids
図2 共同研究のため英マンチェスター大学への滞在(2022.12~2023.3) Figure 2 : Stay at the University of Manchester for joint research