特集・研究紹介

工学研究院・工学院の
先駆的な技術を発信します。

No.434 2024年04月号

工学を学ぼう

特集 02

微生物の秘めたる力 A potential of microorganisms

「“液クロ”の愛称で広く使われている高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は試料中に含まれる複数の成分を分離し、何がどのくらい含まれているかを分析してくれます」

クモの糸に導かれてモノ作りの世界へ

総合化学院 総合化学専攻 生物合成化学研究室 修士課程1年
伊関 叶互

[PROFILE]

出身高校
鶴岡工業高等専門学校
研究分野
生物工学
研究テーマ
プラスチックの酵素分解に関する研究

きっかけはクモの糸

私の地元である山形県鶴岡市にはSpiberというバイオ素材メーカーがあり、「クモの糸」を人工的に作っています。中学時代、Spiberに見学へ行き、「クモの糸は鋼鉄より頑丈なんですよ」と聞いたとき、ものすごい衝撃を受けました。以来、生物を利用したモノづくりに興味を持つようになり、生物工学の道へ進みました。現在では、「プラスチックの酵素分解」に取り組んでおり、毎日大腸菌の力を借りて楽しみながら頑張っています。

プラスチック工場 in 大腸菌

大腸菌などの微生物はもともと細胞内にプラスチックを作る「もと」を持っています。大腸菌にプラスチックを作ってもらう過程でカギとなるのが、「タンパク質」です。タンパク質には様々な種類があり、その中には「プラスチック合成タンパク質」もあります。このタンパク質を導入すれば、大腸菌は小さなプラスチック工場になります。大腸菌の体内でプラスチックの「もと」と「タンパク質」を巧みに操り、プラスチックを合成しています。

図1 組換え大腸菌から抽出したプラスチック Figure 1 : Plastic extracted from recombinant Escherichia coli