特集・研究紹介

工学研究院・工学院の
先駆的な技術を発信します。

No.434 2024年04月号

工学を学ぼう

特集 06

一人前の研究者を目指して To be a capable researcher

「高校の理科室等にある顕微鏡は観察体に光を当てて拡大図を得ますが、電子顕微鏡(SEM)は電子を当てることでμmスケール以下の試料をハッキリと観察できます」

日々の努力が未知の解明に繋がります

環境フィールド工学専攻 地盤物性学研究室 博士後期課程1年
河内 太志

[PROFILE]

出身高校
広島県立三原高等学校
研究分野
地盤工学
研究テーマ
泥炭の熱・力学連成挙動

工学的研究フローを学ぶ

私の研究対象である泥炭は、国内外の寒冷地に分布する軟弱土です。加熱による変形というと熱膨張を思い浮かべますが、泥炭の場合、非可逆的で大きな圧縮が生じます。効率的なエネルギー利用を目的とする地上と地中間での熱交換を考えると、これは大きな問題となります。土木分野では成果の社会実装を第一に考えるため、実験から現場に適用可能な知見を得ることが重要です。実験や論文執筆を通じて、課題設定から始まり、実問題への適用に至るまでの研究者としての基礎体力をつけています。

ミクロな土の力学の世界

研究者として自立するには、独自性のあるユニークな知見を生み出すことも大事です。今年度からは、「誰も知らない」泥炭の熱圧縮の起源の解明を目的に、電子顕微鏡による数μmレベルの状態変化の観察に着手しました。同時に、ミクロ-マクロ応答を橋渡しする理論の構築も目指しています。簡単ではないですが、日々の努力が未知の解明に繋がるという期待が励みになります。

図1 温度制御力学試験装置と試験結果の例 Figure 1 : Temperature-controlled mechanical test device and an example of experimental results and implications