特集03

世界一のロケット研究者に!
Be a World Class Rocketeer !

まなざしは宇宙、重力に勝つ喜びを胸に 目標は世界一のロケット研究者! 機械宇宙工学専攻 宇宙環境システム工学研究室 博士後期課程1年 齋藤 勇士

[PROFILE]
○出身地/静岡県
○博士課程に進学するきっかけ/ロケット燃焼実験データ解析方法のブレークスルー
○座右の銘/宇宙論 語る前に 微分しろ(夢ばかり語るのではなく、現実を見なければならない意)
○研究で意識すること/新規性、再現性、費用対効果

Yuji Saitoh
○Laboratory HP : http://mech-hm.eng.hokudai.ac.jp/~spacesystem/

固体燃料と液体酸化剤で飛ぶ
ハイブリッドロケット

高専3年のときからロケットに興味を持ち、憧れの永田先生がいる現在の研究室に入りました。ある種、競争的要素の強い研究が負けず嫌いの私に合ったのか、寝食惜しまず研究活動を行ってきました。研究分野は、プラスチック等の固体燃料と液体酸化剤の組合せを推進剤とするハイブリッドロケットの研究です。安全や安価等の利点で知られるハイブリッドロケットですが、燃料と酸化剤の混合が不十分で燃焼効率が低い等の課題があるため、未だ実用レベルに達していません。これらの課題を解決するため、高い燃焼効率を持つ端面燃焼式ハイブリッドロケット(図1)の研究を進めてきました。本方式は燃料内に微小ポートを無数につくり、その中に酸化剤を流すことでタバコの火のように燃焼面が均一に燃えていく燃料端面を形成します。私たちは高速造形が可能な高精度3Dプリンタ(共同研究先:東京大学)を用いることで燃料を成型し(図2)、優れた燃焼特性の実証に成功しました。

図1 図1 端面燃焼式ハイブリッドロケットの概念図
Figure1: End-Burning Hybrid Rocket concept.
図2 図2 高精度3Dプリンタによって成型されたロケット燃料(ポート径:0.3 mm、ポート数:86個)
Figure2: Rocket fuel made by High-Accuracy 3D printer. (Port diameter:0.3 mm,Number of ports:86)

他大学には負けられない!
悔しさからつかんだ世界の頂点

端面燃焼式ハイブリッドロケットを研究するグループは、海外にもいくつか存在します。当初は私たちの燃焼実験が毎回のように失敗し、米国のある大学に遅れをとっていましたが、私はそれが非常に悔しく、失敗の原因を徹底的に追究し、1年かけて原因解明にたどり着きました。2015年度には187回もの燃焼実験を行い、ついには私たちの研究成果が世界をリードするものとなりました。

実証に成功した現在は、人工衛星のスラスタや地上打ち上げ用ロケットで用いるための実用化に向けた研究開発を進めており、端面燃焼式ハイブリッドロケットの将来に思いをはせながら毎日楽しい研究生活を送っています。また、本方式の燃焼機構は学術的にも非常に興味深く、燃焼機構の解明は今後の私の課題のひとつです。これからも端面燃焼式ハイブリッドロケットを軸に宇宙工学と燃焼学を研究し、宇宙空間で自分の研究成果を活躍させたい。そしていつか世界中の研究者を凌駕する“独自のロケット”を開発し、世界一のロケット研究者になる。それが大きな目標です。

[指導教員]機械宇宙工学部門 宇宙環境システム工学研究室 教授 永田 晴紀

齋藤君と言えばソフトボール。
ピッチャーとして部を率い、国体やインカレで活躍しました。
学科内の大会で当研究室が3連覇する原動力ともなりました。