特集02

表面ナノ構造に基づく新しい超親水/
超撥水性アルミニウム材料の開発
Fabrication of Novel Superhydrophilic /
Superhydrophobic Aluminum Based on the Surface Nanostructures

失敗から偶然見つけた研究テーマ 水がコロコロ転がる超撥水の面白さ! 材料科学専攻 エコプロセス工学研究室 博士後期課程1年 中島 大希

[PROFILE]
○出身地/北海道
○座右の銘/継続は力なり
○研究に重視すること/自身がその研究に対して魅力(面白み)を感じるか
○研究への心がけ/好奇心を持つ

Daiki Nakajima
○Laboratory HP : http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/ecopro/

金属材料の表面処理技術
「アノード酸化」に着目

私達の身の周りはたくさんの金属であふれています。飛行機や船舶などの大がかりなものから、窓のサッシやボールペン、ステープラーの針など身近なところまで、いたるところに使われている金属材料は、現代社会に欠かせないマテリアルです。

アルミニウムおよびその合金は、時には表面処理を施されて広く用いられている金属材料の一つで、その表面処理の手法の一つに「アノード酸化(陽極酸化)」という技術が利用されています。この方法で作製した“ポーラス型アノード酸化皮膜”(図1)は耐食性が高く、さらに容易に染色可能なため、スマートフォンやパソコンなど多岐にわたって利用されています。これまでは主に耐食性が注目されていましたが、近年の分析・周辺技術の発達によってその特異なナノ構造が脚光を浴びています。

超親水性から超撥水性まで
汎用性の高い材料開発に期待

アノード酸化によってアルミニウム上に生成する酸化皮膜のナノ形状は、使う溶液などのアノード酸化条件に非常に強い影響を受けることがわかっています。近年、私達の研究グループは、アルミニウムを「ピロリン酸」中でアノード酸化することによって、微細構造を精緻に制御できるアルミナナノファイバー(図2)が生成されることを世界で初めて見出し、その詳細な成長過程を報告しています。最近ではアルミニウム表面のナノ構造の造りこみや、他の表面処理プロセスを融合することによって、アルミニウム表面に対して水がよく濡れる「超親水性」から、反対に水をよく弾く「超撥水性」まで自由自在に制御できる表面処理プロセスの開発に取り組んでいます。将来的には、熱交換器に使われるアルミフィンのような親水性が求められる場合にも、化学プラントのような撥水性が求められる場合にも対応できる、非常に汎用性の高いアルミニウム材料が実現するかもしれません。

常に思った通りの結果が得られることなどあるわけも無く、進展が見えないことも多々ありますが、そこからの「なぜ」を追求していくことで初めて見えてくる「何か」を見いだすこと、それこそが面白みであり、大事なことなのではないでしょうか。

図1
図1 ポーラス型アノード酸化皮膜の模式図
Figure1: Schematic illustration of anodic porous alumina.
図2
図2 アノード酸化により作製した繊維状酸化物(アルミナナノファイバー)
Figure2: Alumina nanofibers fabricated by anodizing.

[指導教員]材料科学部門 エコプロセス工学研究室 准教授 菊地 竜也

実験に失敗して一度ゴミ箱に捨てた試料を念のためよく観察したら、ユニークな物質が生成していたことから始まったこの研究、どんどん面白い成果が出てきたね!