特集2 ー前向きに考える力、受け入れる心で社会に貢献する未来の私へー

TALK SESSION 先輩から学ぶ│輝く女性エンジニア像

参加者

神谷 昌美

神谷 昌美
Masami Kamiya

三菱重工業株式会社
航空宇宙事業本部
研究部 材料・強度課

◎出身地/愛知県安城市

瀧田 敦子

瀧田 敦子
Atsuko Takita

人間機械システムデザイン専攻
マイクロエネルギーシステム研究室
博士後期課程2年

◎出身地/茨城県桜川市

岡部 優希

岡部 優希
Yuki Okabe

建築都市空間デザイン専攻
都市地域デザイン学研究室
修士課程2年

◎出身地/北海道札幌市

山道 愛菜

山道 愛菜
Mena Yamamichi

総合化学院 総合化学専攻
細胞培養工学研究室
修士課程2年

◎出身地/北海道札幌市

深谷 桃子

司会・進行
北海道大学 女性研究者支援室
特任助教
深谷 桃子

◎会場:北海道大学附属図書館メディアコート

対談風景

研究も就職も自分が何をしたいのか、
どう働きたいのか、
前向きに考えていけば 道は開けていきます。
“いい思い込み”を大切に。

小さいころからの夢を叶えて
ものづくりの最前線に

司会 はじめに大学院生の皆さんからご自身の研究テーマについて紹介してください。

瀧田 材料の強度を測定するため、従来の引張試験とは逆に押し込むことで硬さを測るインデンテーション法の開発をしています。
山道 工学部出身ですが生物系にも興味があったので総合化学院で再生医療の実現に向けて工学的な観点から取り組んでいます。
岡部 私の研究テーマは都市計画やまちづくりです。人口減少が著しい夕張市を対象に都市再編のあり方に関する研究をしています。

司会 卒業生の神谷さんも自己紹介をお願いします。

神谷 私は小さいころから大きな乗り物づくりに関わる仕事がしたくて、学部卒業で三菱重工業に入社しました。三菱重工業では、複合材の研究を少し前からやっており、また、私は、材料工学科出身だったため複合材の研究に興味をもっていました。民間旅客機で初めて全面的に複合材を採用した航空機製造に携わり、現在は自社開発の旅客機MRJ(Mitsubishi Regional Jet)の複合材を用いた尾翼開発に関わっています。4月で入社9年目になります。家族は社内結婚の夫と2歳の娘がいます。産休から復帰したとき、夫と同じ部署に配属されたので、子どもが保育園で急に熱を出したときにどちらが迎えに行くかなどの連絡がつきやすくて、子育ての面でも随分助かっています。

後輩たちに「英語勉強」のすすめ
バイトや部活も社会に通じるスキル

瀧田 神谷さんが学生時代に経験しておいてよかったと思うこと、やっておけばよかったことは何ですか?
神谷 やっておけばよかったと思うことは英語の勉強です。航空機の材料は海外から輸入するものも多く、材料を調達するときや製品納入先とのやりとり等も英語がベースになります。通訳を介さず自分で自由に聞けたら情報量も増えるので、学生時代にもっとまじめにやっておけばよかったと反省しています。逆に学生時代に経験しておいてよかったことはたくさんありますよ。実家を離れた自活もそうですし、海外旅行やアルバイトもそう。働く体験をしておくと実際に社会に出たときのギャップが小さくてすみますね。
山道 私はバイト経験はありませんが、大学から始めたスカッシュラケットクラブの活動に打ちこみました。スカッシュ自体は個人競技ですが、先輩後輩と関わる人間関係の面ですごく勉強になることが多かったです。
神谷 それは貴重な経験ですね。会社の後輩や新人たちを見ていると、やはり部活経験がある人はコミュニケーション上手。会社でもアピールできるスキルになります。
岡部 就職か進学かで迷いませんでしたか?
神谷 大学3年までは進学する気でいましたが、早く社会に出たいという思いが募って4年から就活を始めました。皆さんはどうでしたか? 進学した決め手は何ですか?
山道 私の場合、高校のときから修士課程に進むと決めていました。自分は理系出身です、と堂々と言えるようになるには、専門知識だけでなくプレゼンやコミュニケーションのスキルも磨きたかった。それにはやはり大学院での勉強が必要だなと感じました。
瀧田 私は学部時代のインターンシップで訪れた製鉄所に感動して「金属に関わる仕事に就くための専門的な勉強をしたい!」と思ったのが、進学動機です。修士課程まで秋田大学にいましたが、恩師の出身校である北大のゼミを見学し、学生が活発に意見を交わす熱気に刺激を受けて、博士後期課程から北大に来ました。
岡部 私も専門研究に惹かれて進学を選びましたが、自分のやりたいテーマがまちづくりだということもあって、神谷さんのように早く社会に出たいという気持ちが強かったです。なので修士1年のときに就活を終え、この春から公務員として働きながら修士論文を書くという新しい生活を始めます。
神谷 そういう選択肢もあるんですね。仕事と研究の両立は大変だと思いますが、先に社会に出ている私からのアドバイスは“困ったことがあったら一人で抱え込まずに、周りに相談すること”。周りの人を上手に頼って、自分が過ごしやすい環境を整えてくださいね。応援しています。

神谷さんと座談会の様子

働くお母さんでもある神谷さんに後輩たちは聞きたいことばかり。「仕事と育児、どちらも大切にしたい」という神谷さんの言葉に真剣に聞き入っていました。

自分の希望を周りに伝えていますか?
成長の糧は前向きさと受け入れる心

神谷さんと座談会の様子

瀧田 女性が少ない環境で働く難しさはありますか?
神谷 職場の理解や規模にもよると思いますが、私の場合は男性の上司がつねに「異性の自分には考えが及ばない部分もあるので、君の希望を言ってもらえるとこちらも助かる」と言ってくれるので、とても助かっています。もちろん自分の希望がすべて通るとは限りませんが、はっきりと口に出すことで相手が「そうだったんだ」と気づいて動いてくれることもあります。自分が無理をしてあとあと周りの人に迷惑をかけるよりは、「お願いします」とできる人に手を貸してもらうほうがベター。こちらが思っている以上に手助けをしてくれるケースが多いです。
瀧田 今の研究室で女性の院生は私一人なので、神谷さんから主張することの大切さを教えていただき、とても勉強になりました。仕事上、大切にしていることは何ですか?
神谷 前向きに考えること、です。どんな仕事も自分の考え方次第。材料の解析も飛行機づくりに欠かせない要素だと自分が納得していれば、働く充実感が違います。あともう一つは、何でもやること。「やりたいことと違う!」と嫌わずに、自分の糧になると思って受け入れると学ぶことはたくさんあります。

女性の適性を活かして
組織の中で居場所を見つける

神谷さんと座談会の様子

山道 レベルの高い仲間に囲まれていると、自分が将来研究職としてやっていけるのか、ちょっと不安になったりします。
神谷 その気持ち、私にも覚えがあります。でも大丈夫。社会に出ると、たとえ研究職であっても知識が多いとか情報収集力が高いとか、いわゆる“優秀”な人材だけでは組織が成り立たないことがよくわかります。そういう人たちをサポートする、あるいはつなぐことも重要な仕事の一つ。特に“つなぎ役”の適性を考えると女性の能力は高いと思います。
山道 第一線で活躍されている神谷さんにそう言っていただけて、勇気をもらいました。就活にも弾みがつきそうです。
岡部 子どもが大好きな私としては将来、育児と仕事の両立が気がかりです。育児は楽しいですか?
神谷 ええ、とても! 毎日子どもの成長を見守ることができて本当に幸せです。保育園に預けることでかえって子どもとの時間を大事に感じますし、育児ストレスも軽くなりました。なにより職場に復帰してから大抵のことが許せるようになりました(笑)。子どもの将来を考えて日本経済や社会に貢献できたら、という思いも強くなりました。
岡部 元気が出るお話をうかがえて嬉しいです。私もこれからいろんなことを吸収して自分の器を大きくしていきたいです。
神谷 北海道大学での日々は私の人生の中でもっとも充実した学生生活でした。皆さんもいつかそう振り返ることができるように、精一杯励んでくださいね。

司会 本日はありがとうございました。